<オリックス1-5中日>◇28日◇京セラドーム大阪

 落合竜が今季初めて首位ヤクルトをゲーム差なしに追い詰めた。主役は、今季初の3安打3打点と爆発した井端弘和内野手(36)。今季はレギュラー白紙からスタートした名手が、貧打と言われてきた打線をつなげた。一時は最下位に転落し、首位と4・5ゲーム差に離されていた昨季王者が、上昇気流に乗った。

 進化した井端の技が、オリックス先発西を沈めた。3回2死一、二塁。井端に先制のチャンスがめぐってきた。捕逸で二、三塁とすると、追い込まれながらも外角球を3球見極め、最後は外角直球を右前へ鮮やかにはじき返した。自身の代名詞とも言える「右打ち」で2点をたたき出した。

 5回1死一、二塁では、今度は内角へ食い込んでくる球を引っ張って左前へ。井端が1人で3点目をたたき出すと、続く森野のタイムリーで西をKOした。

 「相手の西くんがいい投手なのでそんなにチャンスはないと思っていた。ボールに食らいついていった結果だと思います」

 体が反応したと振り返ったが、この2本のタイムリーこそ井端が目指すものだった。これまで徹底して右打ちにこだわっていた井端が今年のキャンプでは積極的に引っ張った。外は右へ。内は左へ。コースに逆らわず、より強い打球を打つことで自分を進化させるためだった。開幕からここまで打率は2割前半と低迷したが、33試合目でようやく成果が出た。「キャンプの成果?

 今年、初めてだけどね」。試合後の言葉に満足感がにじんだ。

 今季は白紙からのスタートだった。昨季は右目の異常でシーズンをほぼ棒に振った。落合監督は定位置を保証せず、井端をふるいにかけた。だが、ゴールデングラブ6度受賞の名手は2月のキャンプを1日も休まず、すべて早出、居残りを敢行するという猛練習で指揮官を納得させた。

 また、例年なら全国どこでもスタンドで応援しているはずの明子夫人の姿が今年はなかった。「どこの家庭にもある事情です」と、井端は照れる。待望の第1子が夏には誕生する予定だという。今季にかける気迫の理由がここにある。

 開幕から快調に飛ばしていたヤクルトをついにゲーム差なしまで追いつめた。「ちょっとずつ。ちょっとずつ、よくなりゃあ、いいだろう。ずっと悪いままじゃ困るだろ」。つなぎ役の復調で“線”になってきた打線について、落合監督は淡々と語った。指揮官の能面が板についてくればオレ竜は強い。昨季王者がいよいよ定位置へ浮上してきた。【鈴木忠平】