恩師の前で決める!

 プロ野球記録の286セーブに王手をかけている中日岩瀬仁紀投手(36)が10日、今日からの楽天戦に向け仙台で調整した。敵将・星野仙一監督(64)はプロ入りのきっかけをつくってくれた恩人。あれから13年、コツコツと積み重ね、球界を代表するストッパーとなった左腕が、偉業達成で恩返しする。

 引き寄せられるように杜(もり)の都に降り立った。プロ野球記録に王手をかけた守護神は、チームとともに札幌から仙台入り。Kスタ宮城に到着すると、キャッチボールやダッシュメニューなどを約2時間の練習で汗を流した。

 岩瀬

 何も変わりません!

 (星野)監督と試合をするわけではない。監督が打席に立つわけではないですから!

 かつて中日を指揮した“闘将”の前で岩瀬が大記録を達成できるか。周囲の注目にも苦笑いで特別な意識を否定した。だが、そうは言っても敵軍のベンチが気にならないはずがない。今や球界を代表するストッパーになった岩瀬にとって、星野監督はプロの扉を開いた恩人なのだ。

 今から13年前。当時、球団側の岩瀬の評価は「球が速いが、長いイニングを投げることができない」。ところが、中日星野監督は「球が速いならば」と指名を決断した。98年のドラフト2位で逆指名入団。夢のプロ入りが現実になった。

 星野監督

 周りの評価は決して高くはなかった。俺が(岩瀬に)言ったのは2イニングとか短いイニングでも良いから抑えてくれと。岩瀬くらいじゃないかな。体も丈夫でここまで長く出来るのはあいつくらいだ。

 中日がKスタ宮城に到着する数時間前。球場で楽天の練習を見守る星野監督は当時を懐かしみ、かつての教え子の成長に笑みを浮かべていた。99年広島との開幕戦で中継ぎとして登板したルーキーは、1死も奪うことが出来ずに降板した。いきなり味わったプロの壁。それでも星野監督は岩瀬を中継ぎとして起用し続けた。

 岩瀬

 どことやってもできることをやるだけ。こればっかりはわかりませんから。

 試合展開によって大きく左右されるポジション。だからこそ大記録が、いつ達成できるかは誰にも分からない。だが、プロの世界へと導いた恩人の前で球史に残る記録達成となれば、まさしく「運命の瞬間」になる。【桝井聡】