<中日2-1オリックス>◇19日◇ナゴヤドーム

 落合竜がドラマチックに交流戦を締めくくった。延長10回、新しいイニング入らない規定の3時間30分まで残り10分を切った土壇場で代打小池正晃外野手(31)が2号サヨナラ弾。主軸が不振にあえぐ中で平田、野本、そして小池ら開幕2軍組の働きでセ・リーグ唯一、交流戦で貯金をつくった。“かっこよすぎる脇役”たちの活躍がリーグ連覇へ弾みをつけた。

 スコアボードに表示された試合時間は3時間22分を過ぎていた。延長10回1死、残り8分。土壇場で代打小池が告げられた。

 「時間のことは頭にありました。引き分けの可能性もあるなと。でも、自分はとにかく振れる球を振るしかないと思った」。

 ラストイニングとなる可能性を頭に入れながら、思い切りは失わなかった。初球。オリックス岸田のチェンジアップを振り抜いた。打った瞬間、右手を突き上げた。完璧な2号サヨナラ本塁打。「出番をずっと待っていました。2軍にいる時にしっかり走り込めた。結果が出て最高にうれしい」。本塁付近には歓喜の輪をつくる仲間たち。自身2度目の感触を確かめながら、手荒い祝福に身を委ねた。

 「かっこいいじゃん。小池に聞いてやってや」。

 落合監督はそれだけ言うと、会見場を後にした。あえて語らず、主役の舞台を用意したのだ。この日も2回に和田の5号ソロで先制したが、6回に追いつかれた。打線はオリックス先発金子千の前に勝ち越し点を奪えない。ただ、森野、和田ら主力が不振にあえぐ時には脇を固める男たちが輝く。記憶に新しいのは6月4日、5日に飛び出した平田の2試合連続サヨナラ弾だが、野本が決勝打を放ったこともあった。そして5月末から1軍に上がった小池。3人とも開幕は2軍だったが、激しい競争を勝ち抜いて勝利に貢献している。パ・リーグからもぎ取った4つの貯金は、名脇役なしには語れないのだ。

 5月に1軍昇格し、交流戦で大爆発してスタメンに定着した平田は小池についてこう話す。「小池さんはムードメーカーなんです」。同じ外野手として競争相手ではあるが、平田が打って戻ってくれば「ナイスバッティング!」とだれよりも笑顔で迎えてくれる。そんな兄貴分だから、サヨナラ本塁打の後にはうれしさのあまり平田の祝福にも力が入ってしまった。

 「手荒い祝福はかなりありましたよ…。まあ、僕は自分の役割というのがあるんで」。小池は仲間たちにたたかれた頭や体をさすりながら笑った。主役となった試合の後でも、自分の役割を冷静に見つめる。かっこよすぎる脇役たちがいてこそチームは輝く。【鈴木忠平】