<巨人5-2横浜>◇22日◇東京ドーム

 千両役者とは、こういう男のことを言うのだろう。今季最終戦、9回無死満塁、得点は1-2。打率トップの巨人長野久義外野手(26)は「チームの指示なので」とベンチスタートだったが、最高潮の場面で待ってましたと大歓声を背に登場した。

 内海に最多勝を贈るには、ここがラストイニング。「何とかしようと思って打席に入ったけどメチャクチャ足が震えた。初めてかもしれない」。緊張と興奮が入り交じる中、冷静に「(横浜山口は)球が速いし負けないように」とバットを少し短く持った。5球目の外角高め直球を右へ運ぶと、打球は熱狂するファンが待つ右翼席へ。17号は代打サヨナラ逆転満塁弾となって内海の最多勝をアシストし、「良かったです」とほおを緩めた。

 打率3割1分6厘で今季を終えた。2割8分8厘だった1年目の昨季との違いは「分からない」と苦笑するが、地道な努力があった。昨年は股関節の可動域が狭くなり、背中が張るなど影響が出た。今年は開幕前にトレーニングコーチ陣から強化メニューをもらった。「意識が変わりましたね。自分のルーティン(日課)も持ち始めた。積極的になった。すごい可能性を秘めています」とターニー・トレーニングコーチ。早出練習ではストレッチや体幹トレを敢行した。144試合目でも地面を踏みしめて強いスイングができたのは、成長の証しだった。

 タイトルを競う阪神マートンは3割1分2厘で、残りは2試合。巨人の日本人右打者では71年長嶋以来となる首位打者獲得をグッと引き寄せたが、お立ち台で「信じて待つか?」と聞かれ「そうですね」と人ごとのように答えた。「日本一になりたい」。CS、その先の日本シリーズへ。喜びを爆発させるのは、最高の舞台までとっておく。【浜本卓也】