巨人前GMで、18日に解任された清武英利氏(61)が、渡辺恒雄会長(85)の追及に失敗した。25日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で会見。渡辺会長による今回の解任は不当とし「そう遠くない時期に」何らかの法的措置に訴えることをあらためて表明したが、具体的な罪名などは検討中と、あいまいだった。18日に球団から出された5つの解任理由についての反撃というには論理も貧弱。A4用紙計13枚の「紙爆弾」は不発といえた。それでも、約250人の報道陣に囲まれて「どや顔」を披露する自己満足ぶりだった。

 単なる暴露会見となった。清武氏は会見の中で、いくつか新しい事実を明かした。最初の標的は桃井恒和球団社長だった。

 清武氏

 桃井恒和氏自身も11月4日の渡辺氏の突然の翻意を聞き「もうやってられない。オレ辞表出すよ」とまで言って、私に憤りをあらわにしてました。

 続いて、渡辺氏の言葉を持ち出して、結果的に江川氏にダメージを与えた。

 清武氏

 渡辺氏は「巨人は弱いだけでなく、スターがいない。江川なら集客できる。彼は悪名高いが、悪名は無名に勝る。彼をヘッドコーチにすれば、次は江川が監督だと、江川もファンも期待するだろう。しかし、監督にはしないんだ」などと、独断人事の狙いを打ち明けました。

 さらには、渡辺会長が江川氏招聘(しょうへい)に際して「原監督に交渉させ、報告を受けることにしていた」と指摘。これについて「監督を権限外の問題に巻き込むことは許されない」などと批判した。また11日の会見の直前には同会長から「君は破滅だぞ。読売新聞と全面戦争になる」と脅されたことも明かした。

 この暴露に、終始口にしてきた「コーチを守る」という目的は見えない。OBの江川氏の名誉も傷つけた。法的手段に訴えるためという主張も感じられない。単に、渡辺氏を悪役にし、自らの正当性を主張する目的しか見えなかった。

 巨人を解雇された18日から、日本シリーズ後に反撃会見を行うと予告していた。不当解雇など法的措置についても具体的な言及があるとみられていたが、それもなかった。この日も代理人の吉峯啓晴弁護士(62)は「解任そのものが不当なので、読売巨人軍による解任が違法ということを前提に、いろいろな形態がある。渡辺氏の11月4日の発言、その後の談話も名誉毀損(きそん)に当たる」と、あらためて訴訟に持ち込む考えを明確にした。

 ただ、「訴訟するなら慎重にと思っているので、どのような被告にして、どういう形態にするかは検討している。訴訟に踏み切ることは確か。時期は来月になると思う」と、具体的な内容は明かさなかった。この点が、会見を開いた目的がぼやける原因になった。

 外国人記者クラブという珍しい会場で、スポークスマンのような会見台に立っての1時間。冒頭では、自身の著書を紹介する場面もあった。最後には「コーチを守れて満足です」と胸を張った。1人、自己満足にひたっているようだった。【金子航】