横浜からフリーエージェント(FA)宣言した村田修一内野手(30)が2日、新しい球団フロントに厳しい現実を突きつけた。ディー・エヌ・エー(DeNA)への球団譲渡承認から一夜明け、横浜市内で新オーナーの春田真会長(42)、新球団社長の池田純執行役員(35)との初交渉に出席。年俸2億2000万円の3年契約(推定)という条件提示とともに慰留を求められたが、即座の優勝争いにこだわる村田と、中長期的なチーム強化を意図する新球団との開きは埋めきれなかった。村田は今日3日、他球団で唯一獲得に名乗りを上げた巨人と交渉を行い、早ければ明日4日にも「巨人村田」が誕生する。

 FA宣言後の初交渉を終えた村田の表情は最後まで堅苦しいままだった。新しい球団トップ2人と会談後の心境を問われ「何とかチームを強くしたいという気持ちは伝わってきた。そこはすごく良かったと思います」と言いながら「後は分かりません」と最後は口ごもった。オーナー会議翌日の速攻交渉に感謝を示しながらも「うちの球団も新しい球団の1つとして考えていきたい。まあこれからじっくり考えさせてもらいます」と話した。横浜はもはや「12分の1」の存在にすぎなかった。

 優勝争いへのあこがれは捨てきれない。「プロに入って9年間、(勝率)5割以上の野球をしたことがない。これからの野球人生を考えて、やっぱりそういう強い野球を自分の肌で感じたい」と切実な思いを口にした。「内川が頑張ったのは刺激になっていないと言えばうそになります。彼は彼でいい選択をしたと思う」と、FA移籍1年目で日本一、MVPに輝いた元同僚のソフトバンク内川への羨望(せんぼう)も隠さない。新球団の熱意も、これまで村田が味わってきた苦渋の前には力を失っていた。

 新球団もチーム強化への意欲は示しているが、村田の心を動かすに十分とは言い難い。1日のオーナー会議後、春田オーナーは「最下位脱出、3年以内にクライマックスシリーズ進出、5年以内に優勝」という現実的な目標を掲げた。だが村田は「僕は3年、5年たったらベテラン。主力から外れて優勝争いするのを目標にしていない。現役でやってるかもしれませんけど、来年、再来年、早いチャンスの段階で優勝争いしたい」という思いを口にし、春田オーナーにも直接投げかけた。新オーナーの目標は主砲の慰留にはマイナスに働いてしまった。

 村田は会見の最後に「いろんなことを聞けてすっきりしました」と吹っ切れた様子も見せた。1時間の会談では年俸などの条件提示も受けたが、ほとんどの時間はチーム強化の話題に費やされたという。もはや条件面で引き留めることはできない。村田は今日3日に巨人と交渉し、翌4日にも決断の時を迎える。