横浜は5日、横浜市内の球団事務所で、前ヤクルト監督の高田繁氏(66)のゼネラルマネジャー(GM)就任を発表した。就任会見の席で高田氏は、初代監督として就任要請した前西武の工藤公康投手(48)との交渉を断念したと公表。GMと監督として信頼関係が築けなかったことが理由と説明した。

 みこしは作るから、君はそこに上がってくれるだけでいい―。乱暴な表現だが、成就しなかったのは、この1点にあったと思われる。交渉中、みこし作りに注文を出した工藤。横浜DeNAは、あくまで、みこしの製作責任者はGM主導という方針を優先させた結果、7日に新監督発表を予定しながら突如、交渉を打ち切った。

 工藤擁立の動きが出たのは11月中旬。面識のほとんどない高田GMと工藤は交渉を重ね、みこしの基礎となる1、2軍のコーチ人事など組閣作業を急ピッチに進めた。意見の食い違いはあった。GMが全権を掌握する流れで、時間が経過していった。

 ここで壁になったのがオーナー会議。ライバル会社からの訴訟問題や楽天の加盟反対などが浮上。DeNAは加盟承認まで慎重な動きとなり、GM就任発表も遅れた。工藤は「時間がなかった」と話したが、ドラフトはおろか、トレードやFA交渉、外国人獲得など各球団が素早い動きを見せる中で、チーム編成にも危機感を募らせていた。それでも最後はGM主導のコーチ案に譲歩し、先週半ばには1、2軍スタッフはほぼ固まっていた。2日に春田オーナーと面談し、受諾の意向を示し、2年契約で金額提示も受けていたが、土壇場でみこしから下ろされた。

 新監督人選は振り出しに戻った。新生ベイスターズ再建へ、チームやファンのためにも迅速な動きが求められる。しかし、監督問題が早期決着したならば、工藤断念の「保険」をかけていたと勘ぐられても仕方あるまい。連日、報道陣に真摯(しんし)な対応を見せていた工藤に対して、礼を欠いた行動と非難されても仕方ない。【スポーツグループ長・田誠】