<巨人2-0阪神>◇29日◇東京ドーム

 三十路(みそじ)エースで巨人が3連勝だ。29日が自身30回目の誕生日だった内海哲也投手が、本拠地の東京ドームで行われた阪神戦に先発。7回無失点で今季2勝目をマークした。今季習得したツーシームで粘りの投球を見せつつ、6回1死満塁のピンチは代名詞であるチェンジアップとクロスファイアで乗り切った。20代から積み重ねてきた技術を伝統の一戦で披露し、節目のバースデー登板を白星で飾った。

 1秒、2秒、3秒…。内海が左拳をぐっと握り締める。よしっ!

 鬼の形相のままベンチに引き揚げた。6回1死満塁。阪神城島に対しては、己の神髄をぶつけた。カウント1-1からの3球目、チェンジアップを振らせ、勝負球は内角へのクロスファイアで詰まらせ遊ゴロ併殺に打ち取った。「悪いときは内角直球が甘く入る。今日はしっかり投げ切ることができた。あの場面は気持ちしかなかった」。生命線であり、最も自信を持つ原点の2球で絶体絶命の危機を切り抜けた。

 節目のマウンドで9年目の新たな年輪も披露してみせた。この日から新球ツーシームを使った。20日のヤクルト戦では直球がシュート回転してしまうことに悩まされたが、逆にそれを利用した。「阿部さんからのアドバイスもあって(シュート回転する)ツーシームを初めて投げた」。弱点を即席で武器に変えた。若い頃とは違う発想だった。「20代はまだ青い。30でようやく、本当の意味で大人の仲間入りというイメージ」。30代の投球術で虎をかわした。

 「30歳・内海哲也」が、この場所に今、立っていることに深い意味がある。シーズン前の1月のグアム自主トレ。日焼けした上半身裸のまま、グラウンドでおにぎりを頬張りながら、感慨深げに言った。

 内海

 プロに入ったばかりのころは、30歳で野球をやめていると思っていた。こうしてユニホームを着ていることが不思議に思う。だから今、こうしていられることが幸せなんです。

 21歳、03年ドラフト。4年越しの念願かなって巨人の門をたたいた。即戦力として入団したが、投手陣の顔ぶれを前に現実を思い知らされた。「工藤さん、桑田さん、上原さん、(高橋)尚成さん…。僕が入る余地なんかなかった」。1軍定着した3年目は離脱した高橋尚の代役で昇格し、4年目、初の開幕投手も上原が直前で離脱し、3日前に指名された。25歳の08年は春季キャンプで脇腹を痛め「けがもしたし結果もボロボロ」。12勝を挙げるも突然の連続四球から降板が目立ち、「突発性四球病」と揶揄(やゆ)されたこともあった。

 9年をへた今。31歳の杉内が「哲ちゃんはチームのいいリーダーですから」と認める。はるか遠くに感じた30歳を迎えると、巨人のエースに上り詰めていた。伝統の一戦でバースデー登板し、今季2勝目。「この登板が決まったときからずっと楽しみにしていて、ワクワクしていました。いや、もう最高ですね」と、一仕事を終えた内海は笑った。城島を仕留め握り締めた拳の中には、巨人の大黒柱としての自覚がぎっしりと詰まっている。【為田聡史】

 ▼内海が7回を0点に抑え2勝目。阪神戦は昨年から3連勝で通算19勝目(13敗)となり、カード別では最も勝ち星が多い。この日は6回、満塁のピンチで城島を遊ゴロ併殺打。ここ2年、満塁での結果を出すと、11年三振、左犠、二ゴ、中飛、三振、二ゴ、二ゴ、三ゴ、三振、12年遊ゴ、遊併。10年までは満塁時の被打率が通算3割1分1厘だった内海が、昨年からは満塁で安打を1本も許していない。