<巨人2-1日本ハム>◇27日◇東京ドーム

 難攻不落の左腕を沈め、巨人の足踏みは1日で終わった。本拠地に迎えた日本ハムの先発は武田勝。原辰徳監督(53)は「右打者は苦労するデータがあった」と、変更の利くポジションにもあえて左打者を配し必勝を期した。だが技巧派が得意とするチェンジアップをコーナーに散らされ、5回まで1得点と封じられた。

 均衡を破ったのは6回。右打者の坂本勇人内野手(23)だった。1死二塁から、外角チェンジアップを引っ張り、左越えに適時二塁打を放った。「最初の2打席は『難しいな』と思いましたが」と坂本。「打球方向は気にせず、自分のスイングを心掛けた」結果は、外角球を左翼へ運ぶという独特の技術で決勝打となった。今年、広角打法を目指したが結果が伴わず、右方向というより「センター返し」に意識を変えた。その軌跡に迫る。

 4月21日。坂本が4安打を放ったものの、巨人は完封負けで最下位に転落した。その試合後、坂本の言葉に意識の変化が見て取れた。「センター中心に打とうと思っています」。ヤクルトの左腕赤川から放った安打の中に、右方向はなかった。

 その2カ月前。2月の春季キャンプでは、広角に打てるようにと、逆方向を意識しバットを振った。昨年、打率2割6分2厘と低迷したことから、打撃の幅を広げレベルアップを図るためだった。「引っ張ろうとして引っ張るのと、センターから右方向を意識して左に打球がいくのとは違うと思うんです」。しかし、開幕後、自分のタイミングで打てていないことに気付いた。

 もともと坂本は引っ張る打撃が持ち味。球界でも珍しい左利きの右打者で、利き腕の左腕で打撃をリードするため、内角球をうまくさばくだけでなく、伸び切った状態でも外角球をしっかり引っ張れる。外角球も右へ流さず、左方向に引っ張ってきた。しかし、右を意識することで打撃に狂いが生じた。坂本はすかさず切り替えた。右への意識も捨て、すり足もやめ、自分の打撃スタイルへ戻した。

 チームが3連続完封負けを喫するなど調子が上がらなかったとき。貧打解消のため全体で右打ちの練習に取り組んだ時期もあった。しかし、そんな中で坂本は首脳陣に申し出た。「センター返しでいいですか」。チーム方針に沿いながらも、自分の持ち味を生かす。そうした試行錯誤の末にたどりついたセンターへの意識だった。

 同じ左利きの右打者、村田は言う。「勇人の左手のリードはすごいと思う。あれだけ外の球をうまく打てると、右方向に打つ必要はないんじゃないかと思うぐらいです」。主砲をうならせるほどの技術が、思考を柔軟に変化させたことでさらに厚みを加えた。

 この日。決勝打を「左方向」に放った。外角球をレフトへ運ぶ、坂本らしい打撃。ここまでの今季50安打は、左方向が最も多いのは変わらない。だが、センター方向の打球も昨季の6本から18本に増加した。打率は3割1厘に上昇。技術と思考との融合が、5月の好調を支えている。【浜本卓也】

 ▼坂本が6回に勝ち越しの適時安打。肩書付きの殊勲安打は村田8本に次いでチーム2位の7本目となったが、4月終了時にはまだ1本しかなく、5月に3日先制打、8日先制打、16日先制打、17日同点打、22日先制打、27日勝ち越し打と6本を記録。他に、今月の坂本は12日に先制スクイズ、17日に同点犠飛があり、5月に挙げた10打点のうち8打点が肩書付き。坂本の「殊勲打点」が増え、チームも5月は14勝3敗3分けと大きく勝ち越している。