<巨人4-2楽天>◇5月31日◇東京ドーム

 連夜のヨシノブ弾で巨人が快勝した。1-1の6回無死一塁、高橋由伸外野手(37)が、2試合連続となる4号2ランを放って試合を決めた。杉内がノーヒットノーランを達成した前夜は、0-0の7回に楽天田中から2ラン。01年5月以来の鮮やかな2試合連続の決勝本塁打だった。巨人は2連勝で貯金は今季最多の8。初の交流戦優勝に向けて中間点を10勝2敗の首位で折り返した。

 高い。6回無死一塁、3打席目の高橋由が初球を見逃すはずもなかった。「追い込まれる前に打っていこう」といつもと変わらぬ積極性。ボールが浮き出したヒメネスの変調を悟る洞察力。上からバットをかぶせてバックスピンをかけた。東京ドームの天井に沿う、なめるような高い円弧。右翼席に真上から落とした。軽快に二塁を回った。マウンド上のヒメネスは身をかがめ、ぼうぜん自失で口に手を当てた。「しっかり当たればスタンドに入る気がする。うれしいですね」。クロスゲームの行方が決まり、残酷なコントラストが出た。

 連夜のお立ち台だった。2試合続けて試合を決めるアーチをかけたのは11年ぶりだった。「続けてホームラン、は確かに記憶にないよ。今は元気にやれていますよ。うん。元気に」としみじみ言った。勤続15年目。上げ潮の時も雌伏の時も、ずっと巨人の看板を張り続ける高橋由が、少し立ち止まって、自分の軌跡を振り返る機会が5月にあった。

 中旬。ソフトバンク小久保が2000安打にリーチをかけた。04年から3年間、同じユニホームを着た。「小久保さんはいつも前向き。練習量はもちろん、新しいトレーニングを取り入れたり。妥協しなかった」。ともに腰痛を抱え、大きなケガも経験している。「ケガしても黙々と、前向きで。そうありたい、ってね」。態度で範を示すスタイルを学んだ。

 小久保が在籍した3年間は、巨人軍の過渡期でもあった。当時は選手会長で、小久保が主将だった。「なかなか勝てない時代で。人も入れ替わって。しかもストライキがあって。04年」。両輪として屋台骨を支える中で薫陶を受けた。大きな節目を目前にして、故障で戦線を離れた小久保。「連絡したんだよ。心配だね…」と思いやりつつ、通算1583安打の自分自身に大きな目標を課してみた。

 高橋由

 ケガなく元気にプレーを続けて、球団に契約してもらえるように。2000本はチャレンジしてみたい。まず(通算1880安打の)谷さん。その次だね。頑張ってみるよ。

 16勝4敗3分けで5月を終えた。でも高橋由は「2カ月終わっただけ。勝っていればチームの流れも変わってくる。結果がすべての世界」とにべもなく、「勝つことが一番だから。交流戦をキッチリ戦う」と繰り返した。試合を決めるスイングをこれからも黙々と続け、金字塔への道を歩む。お立ち台から2時間後、小久保先輩と同じように入念な次戦の準備をし、無人の東京ドームを引き揚げた。【宮下敬至】

 ▼高橋由が6回に勝ち越し2ラン。前日も先制2ランを放っており、高橋由の2戦連発は昨年8月9、10日横浜戦以来になる。これまで高橋由は2試合以上の連続本塁打を40度記録しているが、勝利打点付きの2試合連続Vアーチは01年5月17日阪神戦(勝ち越し)18日横浜戦(逆転)に次いで2度目だ。これで5月の巨人は16勝4敗3分け、勝率8割となり、4月終了時の5位から貯金8の2位へ浮上。巨人の月間勝率8割以上(10試合以上消化)は、83年5月に17勝4敗1分けで勝率8割1分を記録して以来、29年ぶりのこと。