<巨人4-3西武>◇9日◇東京ドーム
勝負を挑まれた4番が移籍初のサヨナラ打を放った。巨人が村田修一内野手(31)が一打で今季初のサヨナラ勝ちを収めた。同点とされた直後の9回、3番坂本が敬遠されて迎えた1死一、二塁。それまで4打数無安打の村田が、低めのスライダーを捉えると打球は遊撃手の頭上を越えた。巨人で3番打者が敬遠された直後に4番打者サヨナラ打を放つのは、99年6月8日中日戦の清原和博(日刊スポーツ評論家)以来。第76代の4番のバットで巨人が交流戦初優勝へ加速した。
上ずる声量を少し落としてステージで言った。「あそこで打たないと、ここに来た意味ないです」。一拍おいて「巨人に来て良かったです」と村田が言った。
4番を張るに、自分はまだ足りていないと思っている。「いつか言おうかと思っていたけど、機会がなかった。バカスカ、でっかいのを打っているわけでもないので…」の負い目があった。自分で幕を引いた。今季初めてのサヨナラ勝ち。本音を出してみた。「見渡す限り」の巨人好きは敏感だった。雄たけび。拍手。笑顔。遠くまで見渡し胸を張り、自分も笑った。
ネクストでも不敵に笑っていた。同点の9回1死二塁で坂本。西武はすんなり敬遠策を選択した。オレと勝負か-。「キャッチャーが立っての敬遠は記憶になかった」。スラッガーのプライドが傷つけられたのかと言えば、少し違った。「決めてやろう」とうずく一方で、「打率、得点圏打率。勇人の方がずっと高い。歩かされると思っていた」と控えめな自分もいた。青いマウスピースをかみ直しマイケルをにらんだ。
気持ち短く持っても、大曲がりのスライダーにバットが止まらない。3球目のボール球を小さな軌道で強振した。空振りでカウント上は追い込まれた。だが心理状態は真逆だった。「あれだけ合っていなければ、確率的には同じボールが高い。予測の範囲内で追いかける。整理出来ていました」。エサをまいたつもりは毛頭ない。でも結果的に、相手にはそう映ると読んだ。「真っすぐが来たらごめんなさい」。案の定の低めを、「見逃せばボール」のゾーンまで追った。同じ小さな軌道でも、強振から一転の軽打。左手1本を放り出し、芯にミートした。
打席の中で、2人の顔が頭に浮かぶことがある。
村田
「バットを短く持ってみては」と言ってくれた岡崎さん。僕の後ろには阿部さんがいる。ボール、ボールと出来ないから、甘いところに来るんですよ。
チームが低迷した開幕当初、みんなの前で必死に訴えかけてきたヘッド。4番は阿部の故障で回ってきた代役。「本当ならもっと、ふさわしい仕事をしなくちゃいけないんですけどね」。謙虚な思いをいつも胸の中にしまっている。
まぶしく見えた巨人軍。ど真ん中に自分がいる。まだ足りないと思うから純なまま打席に向かう。豪快なスイングを、潔く傍らに置ける。岡崎ヘッドは、真っ先にバットを短く持った村田に感謝している。「打撃を確立しているのに、短く持ったり右打ちしたり。奥深さを感じる」と言う。真っ先に抱きついた阿部は「うれしいねぇ」と喜ぶ。5月1日に座ってから20勝6敗3分け。「いい経験をさせてもらっている」と謙遜するが現実は逆。個人成績は関係ない。4番村田が、その姿で巨人を前に動かしている。【宮下敬至】



