<中日6-0阪神>◇25日◇ナゴヤドーム

 竜のエースが虎をねじ伏せた。中日吉見一起投手(27)が今季初完封で7勝目を挙げた。序盤からコースを突く丁寧な投球で阪神打線を4安打に抑えた。チームにとっては守護神岩瀬仁紀投手(37)が球宴期間中に左肘の張りを訴えるなど、本調子ではない状況。緊急事態でエースがしっかりと仕事をした。

 最後まで投げ続けた。後半戦スタートの大事な試合。絶対に落とせない。先発に指名された吉見はその意味を理解していた。試合後にたまっていた思いをはき出した。

 吉見

 今日は始めから最後までいくと決めていた。完封とまではいかないまでもいろんな条件があったので…。

 試合の流れをかぎ分ける。これがこの男の強さだ。分岐点は1-0で迎えた5回だった。1死から6番マートンに二塁打を浴び、その後、2四球で2死満塁。だが、ここからがギアチェンジ。鳥谷にフルカウントまで粘られたが、最後は低めの132キロフォークで空振り三振に仕留めた。その裏にチームが3点を挙げて試合の流れが決まった。

 志願しての9回マウンドだった。8回を終えた時点でチームは大量6点をリード。権藤投手コーチから「代わるか」と投げかけられたが「いきます」と首を振った。守護神岩瀬が本調子とは言えないチーム状況。エースとして115球を投げきった。今季チームはこの試合まで16度の無失点リレーを記録しているが、1人で投げきったのは吉見が初めてだった。

 どこまでもストイックだった。今月15日巨人戦で中4日登板を終えたが、あえてチームの広島遠征に参加した。「2軍の練習でやると気が抜けるというか笑ってしまう。スキを作りたくなかったんです」。球宴休みも家族サービスを封印。体を休めても気持ちを切らさなかった。

 後半戦のキーマンになることは間違いない。次回は31日からの巨人3連戦で登板する見込み。高木監督は「休ませても良かったけど、(完封が)これからにつながるということで行かした」と続投の意図を説明した。首位巨人追撃へ。エースが逆転Vの使者になる。【桝井聡】