<中日0-1阪神>◇8日◇ナゴヤドーム

 えっ敵将が?

 今季10戦目にしてナゴヤドーム初勝利を挙げた阪神が、敵将にキツ~い1発をかまされていた。実は試合前、中日高木守道監督(71)が、右肩故障の影響で万全のプレーができない金本の起用や、球団史上初めて導入したGM制にまで言及。独特のトーク全開で疑問符を投げかけていた。ナインは知ってか知らずか、ともかく意地の1勝だった。

 監督就任後、初めてナゴヤドームで阪神に負けた高木監督は脱帽した。「ブランコもまったくダメ。この攻撃じゃどうしようもないわ」。能見1人にやられた力負けと割り切り、サバサバとコメントした。だが、その数時間前。阪神ナインのアップを見つめながら和田虎に数発、強烈な先制パンチを見舞っていた。

 最初のターゲットは金本だ。「あれも大変じゃない?

 やれるならいいけど…。あの守備はマイナス。本人も分かってるだろうけどね」。右肩の状態が思わしくなく、チーム事情もあってスタメンを外れている鉄人を口撃。特に守備は「マイナス」と言い切った。敵軍の選手はほめても、酷評するケースは珍しい。だが、12球団最高齢監督に遠慮はない。「使う方も難しいわ」と、起用する和田監督の心中も思いやった。

 続いて元監督の中村勝広氏(63)を招聘(しょうへい)した、阪神球団史上初のGM制もチクリとやった。「ちゃんとできるならいいけど、日本は監督もGMと同じみたいなもんだからね」。GMと監督の権限が明確なメジャーと違い、日本はあいまいな部分が多い。権限を巡って相互認識が違えば、火種にもなるのではないか。言葉の行間に大きな疑問符をにじませた。

 話題は中日が1-0勝利した7日の作戦に移った。9回2死二、三塁の守りで代打ブラゼルを敬遠せず、勝負して打ち取った場面だ。「ブラゼルがようないから勝負だよ。(続く1番の)上本の方が(8月23日の)倉敷(での対戦)でもミートしてきてたからね」。今のブラゼルの状態なら、上本よりくみしやすしの判断という。

 この試合前まで今季ナゴヤドームでの阪神戦は、負けなしの8連勝1分け。優位な戦いが続くと、より相手の弱点も見えるということか。「不思議やで」と守道節は続いた。指しているのは数年来の阪神とナゴヤドームの相性だ。「阪神がここでやる時は、うちが神宮でやる時と同じになる」。中日も神宮は今季も2勝7敗2分けで5年連続負け越し中の鬼門だが、ミスなど自滅で敗れるケースが多い。阪神のナゴヤドームもまったく同じと分析した。

 山本昌が能見との投げ合いに敗れた試合後は「今日は相手(能見)が悪かった。(投げ合うなら)明日の投手(岩本)にすればよかった。明日の投手の方が点を取れるかもしれん。でも取れる言うたらしかられるな」と冗談めかしてコメントした。

 だが、以前にも「タイガースのマネをしちゃいかんわ。4番にバントさせとっちゃね」と、自戒を込めて反省した監督だけに、まんざら冗談には聞こえない。球界のご意見番で元阪神監督の野村克也氏の毒ガスも顔負け?

 ここまで歯に衣(きぬ)着せず、ライバル球団を批評できる敵将もなかなかいない。だがここまで言われ放題で、タイガースも悔しいはず…。いずれにせよ、相手をギャフンと言わせるには、結果で示すしかないだろう。【松井清員】