<日本ハム6-2オリックス>◇18日◇札幌ドーム

 エースの快投で、優勝マジック見えた!

 日本ハム武田勝投手(34)が、18日のオリックス戦(札幌ドーム)で9回4安打2失点に抑え11勝目を挙げた。自己最多となるシーズン4度目の完投勝利。チームは貯金を今季最多の13とし、この日敗れた2位西武とのゲーム差を2・5に広げた。混戦パ・リーグのV争いから1歩抜け出し、最短で22日に優勝マジックが点灯する。

 武田勝の投球スタイルは、昨年までエースだったダルビッシュ(レンジャーズ)とは正反対だ。豪快さの代わりに、精緻なコントロールで緩急を自在に操り、淡々とアウトを重ねた。自己最多の4完投で挙げた11勝目に「やりました」と、表情を変えずに女房役の鶴岡につぶやいた。派手なガッツポーズなんて、この左腕には似合わない。4月29日楽天戦以来となる完投勝利にも「ご無沙汰だったな…って。申し訳ありません」と、お立ち台でざんげしたのは、先発ローテ最年長としての自覚と、強い責任感があったからだ。

 真骨頂は、何と言っても制球力。序盤は苦しんだチェンジアップの制球も、回を追うごとに正確さを増した。今季自己最多の9奪三振も、ストライクが先行して、27アウトのうち21アウトが3球以内という“エコ投法”。「四球もなかったし、変化球で攻めてもストライクが取れたので、バランス良くピッチングができた」。2点を失ったことすら感じさせない安定感だった。4回には、野中を見逃し三振で切り、1000投球回に到達。「中継ぎから先発に転向してから、目標にしてきた数字だった」と表情を崩した。

 先発の軸としてだけでなく、精神面でも若い投手陣の支柱となっている。14日、2軍でもがいている斎藤と電話で話した。「お前、人生初の“アレ”じゃね?」と聞くと、斎藤は「そう“アレ”です」と答えた。“アレ”=挫折。「斎藤はエリートですよね。今までちやほやされてきた部分もあると思う。周りの意見を素直に聞くことも大切。それが出来るようになると、すごく楽になる。あいつは今、いい経験をしていると思いますよ」。等身大のアドバイスが、多くの後輩の心を支えている。

 チームは9連戦の8試合目。16日は5投手、前日17日には7投手をつぎ込むなど救援陣はフル稼働だった。栗山監督は「(武田勝が)完投してくれたことは大きかった」と、意義ある1勝に最敬礼。ダルビッシュが抜けたことで芽生えた責任感が、心身両面で背番号38をさらにパワーアップさせている。【中島宙恵】

 ▼通算1000投球回=武田勝(日本ハム)

 18日のオリックス23回戦(札幌ドーム)の4回、野中を三振に仕留めて達成。プロ野球330人目。初投球回は06年3月26日の楽天2回戦(札幌ドーム)。

 ▼日本ハム○、西武●の結果、両チームの差は2・5ゲームに開いた。日本ハムが2位に2・5ゲーム差をつけたのは8月8日(2位ロッテ)以来になる。日本ハムは19日オリックス戦、21、22日西武戦に3連勝すれば無条件で22日にマジックが点灯。西武が19日ソフトバンク戦に○の時はM7、西武が19日ソフトバンク戦に●の時は、21、22日のソフトバンクの勝敗次第で7か6が出る。仮に、日本ハムが19日●でも、西武も19日●ならば、日本ハムが21、22日○○、ソフトバンクが21、22日に1敗でM7が出る。