<セCSファイナルステージ:巨人4-2中日>◇第6戦◇22日◇東京ドーム

 巨人が3連敗の崖っぷちから3連勝。アドバンテージ1勝を含め4勝3敗とし、3年ぶりの日本シリーズへ駒を進めた。

 「男弾」が効いた。巨人村田修一内野手(31)がダメ押しソロを含む3安打と、打線をけん引した。5回の1発は、9回に2点差と詰めよられただけに効果的だった。守備でも好プレーを見せるなど、雌雄を決する大一番で存在感を示した。自身初の日本シリーズ進出で、再び輝きを放つ。

 中日の息の根を止めたのは、村田のひと振りだった。3-0で迎えた5回。山井の外角スライダーを引っ張ると、打球はセンター左へ。「いけー!」。村田の叫びに乗り、バックスクリーン左に飛び込んだ。もう1点もやるまいと守護神を早期投入してきた中日の思惑を打ち崩す、CS第2号。割れんばかりの大歓声の中、右拳を突き上げた。「あと1点でこっちのペースと思っていた。勝って良かった」とほおを緩めた。

 こんなシーンを、ずっと思い描いてきた。日大で在籍した経済学部のキャンパスは、東京ドームのすぐ近くにある。最寄り駅も同じ水道橋。「いつも巨人ファンがいっぱいいましたね」とユニホーム姿でドームに向かうファンの多さにいつも驚いていた。ドーム内から漏れてくる大歓声に心を奪われ、足を止めて聞き入ったこともあった。心の片隅には、ある思いが芽生えていた。「いつかは自分も、ここで野球がしたい」。

 FA権を行使し、今季は夢を実現させた。だが、続きがある。「今振り返ると、野球人として『いつかは巨人で』っていうのは大学の時からあったかもしれない。自分も東京ドームのファンを喜ばせたい」。シーズンでは終盤に不振に陥った。ファンのため息に、責任を感じた。CSでも、いきなり3連敗を喫した。「胃がやられそうだった。こんなに深呼吸をしながら野球をしたことはないですよ」と漏らすほど、極度の重圧と向き合った。

 そして、この日。打っては3安打、守っては三遊間への安打性の打球を軽快にさばき、拍手喝采を浴びた。最後の打球も難なく処理した。大喜びする巨人ファンが見つめる中心には、村田がいた。「歓声がうれしかった。頑張って良かったです」。大一番で2つ目の願いをかなえた。

 あこがれの日本シリーズ進出を決めた。「日本一になりたい。この勢いに乗っていきたいです」と言うと、「後がない状況で3つ勝てた。想像以上の緊張感がありましたよ。これ以上、緊張はしないでしょ」と笑った。「思い切ってバットを振れれば、巨人に来て良かったと思えるんじゃないですかね」。力強いスイングのその先にこそ、日本一がある。最高のフィナーレへ、物語はまだ終わらない。【浜本卓也】