海外移籍が可能となるフリーエージェント(FA)権を取得した西武中島裕之内野手(30)が、FA権行使に向けた手続きを完了させたことが4日、分かった。すでに、球団側との話し合いは終了したとみられ、FA行使に向けた書類を球団側に提出した。海外FA権取得者では一番乗りで、昨年かなわなかったメジャー移籍へ速攻アピールする。

 中島が、夢に見てきた大リーグ挑戦に1歩を踏み出した。シーズンが終了した10月15日以降、球団側と複数回交渉。FA権を行使する旨を伝え、球団側も温かく送り出すことを決めた。FA権を行使するには、日本シリーズ終了の翌日から土、日、祝日を除く7日以内にコミッショナー宛てに文書で申請するルールだが、中島はすでに文書を球団側に提出。会見を開く予定はなく、14日にFA宣言選手として公示され、本格的な交渉が始まる。

 夢の舞台への思いは、不変だった。昨季は、ポスティングシステムで大リーグ移籍を目指したが、独占交渉権を得たヤンキースと交渉が決裂。今季は西武に残留したが、FA権行使の思いは変わらなかった。シーズン終了後の10月15日には「何も言えないです」と口を閉ざしたが、球団側との話し合いの中では、大リーグへの熱意を伝え、球団関係者も「彼の熱い思いをくんだ」と話した。

 大リーグ関係者もマークを続けてきた。ジャイアンツ、ダイヤモンドバックスのタワーズGMら球団幹部、ロイヤルズのメディナGM補佐ら複数の大リーグ関係者が視察。すでに、水面下では複数球団が調査を始めているとみられる。昨季は中島自身に球団の選択権はなかったが、今回はFA権を行使しての挑戦で、条件面を精査した上で球団を選択することが可能。極めて低いが、条件次第では、日本球界残留もゼロではないとみられる。

 シーズン終了後は、痛めた左脇腹痛の治療に励むなど、体のメンテナンスを重視。患部に負荷をかけない程度に、都内の施設でトレーニングも行ってきた。昨季の苦い経験から、FA宣言選手と公示された後は、すぐに交渉の場に向かえるように、渡米準備も着々。代理人は昨季と同じく、グレッグ・ゲンスキー氏とみられ、密に連絡を取りながら、交渉の進捗(しんちょく)次第では、緊急渡米の可能性もある。関係者によれば「自分への挑戦。どんな世界か、この目で見たいんです」と熱意を示し、本職の遊撃手での挑戦を望んだ。日本屈指の大型遊撃手の進む先はどこか。移籍に向けた動きが、いよいよ本格化する。

 ◆中島のポスティング破談メモ

 昨年11月22日にポスティングシステム(入札制度)での大リーグ挑戦を表明した。ヤンキースが独占交渉権を獲得。「ウォ~ッと思いましたよ。すごい球団に入札してもらった」と感激したが、交渉は難航した。

 30日間の交渉期限が2日後に迫った1月5日、直接交渉のために緊急渡米。ニューヨーク到着後の約3時間後に、破談が発表された。独占交渉期限まで、約28時間を残しての打ち切り発表だった。破談の原因は、冷遇された契約内容の中身で、提示されたのは1年80万ドル(当時は約6400万円)。それでも、「お金とか関係ない」と繰り返したように、金銭面での支障はなく、ネックになったのは、6年間はヤンキースが保有権を保持することだった。飼い殺しにされる危険性を憂慮し、1年後のFA権取得を訴えたが、却下された。