ちばりよ~!

 ソフトバンクのドラフト1位東浜巨投手(22=亜大)が親類で元ダイエーの大野倫氏(39)から10勝指令を受けた。大野氏は現在、沖縄で九共大の沖縄事務局長で東浜のふるさと、沖縄・うるま市の少年野球チームの監督も務めている。地元を盛り上げ、自身が大成できなかったプロでの活躍を期待した。

 沖縄水産で90年、91年と夏の甲子園で準優勝に輝いた大野氏と沖縄尚学で08年春に優勝した東浜は親戚にあたる。母方の祖母同士が姉妹だ。

 大野氏は東浜のキャンプでの姿をテレビや新聞でチェック。「巨はいいところを見せようと思わず、自分のペースで調整を続けているのは、たいしたもの。プロは結果がすべてですから。ケガをしなければ10勝できる。十分やっていける」とエールを送る。

 「ケガをしなければ」の言葉に強い思いが込められている。91年夏、4連投を含む6試合を1人で投げ抜いた。その結果、右肘剥離骨折で投手を断念した。打者として臨んだプロでも顔面骨折や肉離れなどに泣かされ、巨人、ダイエー(現ソフトバンク)での7年の現役生活で本塁打はたったの1本だった。

 その唯一の本塁打が東浜と大野氏を結びつけた。00年6月21日の中日-巨人(ナゴヤドーム)の7回に飛び出した1発を東浜はテレビの生中継で見ていた。母孝子さん(51)が「ワーッ。倫が打った」と喜んでいたので「なんで倫って呼ぶの」と聞き、そこで初めて親戚だと知り「すごい!」と喜んだという。90年生まれの東浜は大野氏の高校時代を知らないが、そのときから身近なヒーローとなった。

 大野氏は「なんだかんだ言って血がつながっていますからね。ぜひ頑張ってほしい」と期待する。最近、サッカー人気に押され沖縄の少年野球クラブが減少している。東浜の活躍で、今度は子どもたちの新しい身近なヒーローになってほしいと願っている。自身がプロで果たせなかった思いも託す。

 大野氏からの10勝エールを伝え聞いた東浜は「そうですね」とグッと顎を引き気持ちを新たにした。福岡移転後、大卒の新人10勝は92年の若田部健一氏(日刊スポーツ評論家)03年の和田毅(オリオールズ)だけ。重いバトンを託された東浜は、早ければ明日10日にもシート打撃に登板し、実戦へ向け調整速度を上げていく。【石橋隆雄】

 ◆大野倫(おおの・りん)1973年(昭48)4月3日、沖縄・うるま市生まれ。沖縄水産では90年、91年と2年連続準V。九共大へ進学し2年春から4番として活躍。95年ドラフト5位で巨人入団。右打ちの大砲として期待された。00年オフ、吉永とのトレードでダイエーへ。02年限りで引退。通算24試合、打率1割6分1厘、1本塁打、2打点。現在は九共大の沖縄事務所所長を務める。また、ボーイズリーグうるま東ボーイズの監督として、中学生を指導。