<WBC強化試合:日本代表候補0-7広島>◇17日◇サンマリン宮崎

 これぞ下克上だ!

 8年目の広島鈴木将光外野手(25)が17日、侍斬りの立役者となった。日本代表との強化試合で“プロ初本塁打”を含む3打数2安打4打点の大活躍だ。05年高校生ドラフト1巡目の大器も、1軍経験は昨季のわずか1試合。「無名男」が侍ジャパンのお株を奪い、1軍生き残りを強烈にアピールした。

 これぞ下克上だ。WBC3連覇を目指す侍ジャパン初の対外試合の主役は「無名」の鈴木将だった。ファンが代表のふがいない戦いぶりに愛想を尽かし空席が目立つようになっていた9回。2死一、二塁で内海の外角高めに浮いたスライダーを引っ張り込んだ。7点差をつける1発のインパクトは大きかった。

 「行けーっ!

 と思って走っていました。僕は1球1球が勝負なので。一振りに集中して、何をどこに打つとかではなく、来た球にスイングできるようにしていた」

 最初の見せ場は5回だった。3回の守備から途中出場し、回ってきた最初の打席。2死一塁で山井の直球を捉え、左中間を破る適時二塁打を放った。2安打4打点で、初の開幕1軍に向け大きく前進した。

 プロ7年間で1軍の舞台に立ったのは1度きりだ。昨季9月13日巨人戦(東京ドーム)に7番右翼でスタメン出場し、初安打もマークした。このときの相手はくしくも内海だった。開幕戦となる3月29日巨人戦(同)も相手は「お得意様」が濃厚となれば、期待は膨らむばかりだ。

 世界を知る男のオーラを吸収していた。1月に西武嶋と沖縄・石垣島で合同自主トレを行っていた。その隣のグラウンドでは“先輩”のサッカー日本代表の本田圭佑も自主トレに励んでいた。石川・星稜中時代に、隣接する星稜高で活躍する1つ年上の本田の存在を知っていた。同じ地から、世界に羽ばたいていった男の活躍が刺激になっていた。大舞台で力を発揮したのは偶然ではないのだろう。

 野村監督も成長を見せる鈴木将を「順調に来ている。自信になると思う」とたたえた。存在感を示すルーキー下水流に加え、外野争いは日に日に激しさを増す。宮崎に吹いた下克上の風は、確実にチームを強くする。【鎌田真一郎】

 ◆鈴木将光(すずき・まさみつ)1987年(昭62)4月8日、富山県生まれ。遊学館から05年高校生ドラフト1巡目で広島入団。デビューは昨年9月13日巨人戦。7番右翼で先発し、初打席で内海から右前打するなど3打数1安打だったが、これがプロ唯一の1軍出場。182センチ、82キロ。右投げ右打ち。