阪神中村勝広GM(65)が今秋ドラフト1位候補の済美・安楽智大投手(3年)を直接視察することが19日、分かった。安楽は昨年9月の秋季大会で右肘を故障した。視察は回復具合を見定めるためで、7月上旬に愛媛で行われる練習試合に足を運ぶことになりそうだ。この時期に編成トップが練習試合を視察するのは異例。安楽への評価の高さがうかがえる。

 国内だけでなく、海外からも注目される最速157キロ右腕のチェックに虎の編成トップが動く。安楽は昨年、2年生ながらエースとして春夏甲子園に出場し、高校日本代表としても活躍。今秋のドラフト1位の最有力候補に挙がっているが、関係者によれば、7月に行われる練習試合を、中村GMが直接視察する予定になっているという。

 「あれだけの投手はそうそう出てくるものではない。ただ、故障があっただけに、どれくらいの状態か、は気になる」

 球団幹部は安楽についてこう語った。阪神は早くから安楽をドラフト1位有力候補に挙げ、担当スカウトを密着させてきたが、懸念材料は昨年の秋季大会で痛めた右肘の回復具合だ。安楽が故障から復帰して先発した5月31日、兵庫県内で行われた練習試合には佐野アマスカウト統括、竹内スカウトディレクターらが足を運んで視察した。

 「以前のいい状態が10なら6、7といった感じだけど、夏に向かって上がってきた」

 視察の後、佐野アマスカウト統括はこうコメントしたが、1位指名を決定するには慎重な判断も必要になる。そこで編成トップが直接チェックに乗り出す。もちろん、7月13日に開幕する今夏の愛媛大会でも担当スカウトらが安楽を徹底マークする方針だ。

 この日は西宮市内の球団事務所でスカウト会議が行われた。高野球団本部長、中村GMも参加して、指名候補の130人をリストアップ。佐野アマスカウト統括は「現段階で評価している選手について話し合った。これから最終チェックです」と説明した上で安楽や早大・有原航平投手(4年=広陵)ら競合必至の投手について「当然(リストに)入っています」とした。

 阪神は他にも前橋育英・高橋光成投手(3年)らを上位候補にリストアップしている。猛虎の将来にかかわるドラフト1位決定へ向けて、安楽の状態が注目される。

 ◆済美・安楽の復帰の歩み

 昨年の秋季高校野球愛媛大会で1回戦(西条戦)で先発したが、3回1死一、二塁の場面で右肘に違和感を訴えて降板。2回1/3を投げて4安打4失点で、チームも敗れ今春の選抜出場を逃した。その後、秋冬と投球練習を回避して体力強化に専念した。4月5日の練習試合で実戦登板復帰。5月10日のMRT招待高校野球大会・妻(宮崎)戦では、7回107球を投げ、10三振で0封。阪神佐野アマスカウト統括もチェックした同31日の明石商との練習試合では、ワインドアップ投法を解禁して9回9安打2失点。最速は144キロだった。