最愛の姉への恩返しだ。西武藤田太陽投手(31)が3日、西武ドームで契約更改交渉に臨み、1400万円アップの推定年俸2900万円でサインした。昇給分の使い道を聞かれると「姉ちゃんのお墓を建てようかな」と照れくさそうに言った。

 悲しみとともに始まったシーズンだった。キャンプ2日目の2月2日、姉陽子さんが胃がんのため37歳の若さで亡くなった。突然の訃報。キャンプ中で葬儀にも参列できなかった。3人姉弟で、末っ子の長男を一番応援してくれたのが長女の陽子さんだった。00年にドラフト1位で阪神に入団したが、低迷の続いた藤田を励まし続けてくれた。悲しみに暮れながらも、野球で活躍することを何より喜んでくれた陽子さんのため、練習に打ち込んだ。毎晩、寝る前には、その日の練習内容、出来事などを天国の姉に報告した。思いは結果になって表れた。リリーフとして開幕から13試合無失点で、勝利の方程式の一角として定着した。

 後半戦は左ふくらはぎのケガに見舞われたが、自己最多となる48試合に登板した。6勝3敗19ホールドで防御率3・91。「よくやったという気持ちと、情けない気持ちと半々です」と言った。3月の開幕直前、故郷秋田のお寺の墓にお参りした。今季の活躍に力を貸してくれた姉のために「豪華にね」と新たに建てるつもりでいる。来季、目指すは年間を通じてのセットアッパー。悲しい時に背中を押してくれた姉のためにも、その座は譲れない。【亀山泰宏】