8日に初日を迎える春場所の取材で、大阪に来ている。先月23日に大阪入りし、番付発表後の部屋回りで取材活動し一度、帰京。再び2日夜の最終で大阪に入った。その2日夜は、前任の陸上担当時代に日刊スポーツ評論家としてマラソン解説でお世話になった、瀬古利彦さん(DeNAランニングクラブ総監督)らと会食。「相撲? お相撲さんになっちゃうの?」…なんてジョークを飛ばされながら、またの再会を約束してお別れした。

 3月の春場所、7月の名古屋場所、11月の九州場所(福岡)は、われわれ取材記者も約1カ月の出張生活に入る。マンションタイプのホテルに寝泊まり。味気ない日々だが、そこでの楽しみはこれも「再会」。年に1度の地方場所に加え私の場合、22年ぶりの相撲担当復帰なのだから、久々もいいところだ。

 連日の? ちゃんこ料理店回りで、現役を退いた後は相撲協会に残らず、苦労して店を開いた旧知の関係者と、懐かしの再会を果たす。東大阪市・小阪で「ちゃんこ料理 新(あらた)」を経営するのは、あの若貴兄弟を輩出した藤島部屋(のち二子山部屋)の元幕下力士の千葉公康さん(50)。「あっ、ナベさん。またタダ飯食いに来たんですか!」と、瀬古さんに負けず劣らぬ相変わらずのキツーイあいさつで迎えてくれた。「貧乏脱出」というテレビ番組でも紹介されたそうだが、そんな苦労を、おくびにも出さない男だ。絶品の味付けは4種類。お勧めします。

 ミナミの繁華街、日本橋の千日前筋に「ちゃんこ 西乃龍」を構えるのは、元前頭常の山の下村重和さん(52)。若貴担当時代、当時貴花田が日の出の勢いで番付を上げたころに初対戦したのを強烈に覚えている。立ち合いのボクサーのような張り手1発。「貴花田を張りましたよね。すごい音でしたよ」。そんな問いかけに下村さんは、ニヤリと笑って言った。「うん。お兄ちゃん(若花田)にもやったよ。貴乃花親方はね、今も、たまに1人で来てくれますよ。カウンターに座ってね」。何かホッとした気分になった。鶏がらを惜しむことなく使い、8時間も間煮込んだだしは、これまた絶品だ。

 まだまだ紹介しきれない店がいっぱいある。厳しい夜の取材?だが、これも仕事と割り切って街に出るとしよう。20年も前のことが、きのうのことのようによみがえる。狭い社会だが一度、中に入り受け入れてくれれば、縁が切れることはない。角界の良さでもある。【渡辺佳彦】