メダルじゃ飯は食えない-。一念発起した1人の若者が、一番出世力士として晴れ姿を披露した。佐渡ケ嶽部屋の琴稲垣善之(21)は高3時に国体レスリングで優勝。リオや4年後の東京五輪を狙うなら、法大3年生として今ごろは全日本の強化指定選手として合宿や海外遠征を重ねていたはずだった。

 再転向の理由は単純明快だ。「メダルより相撲に魅力を感じました。自分には相撲の方が向いていると思うし職になる」。昨年5月に法大を退学。今年1月下旬、佐渡ケ嶽親方に連絡を入れた。10年越しの電話を師匠も待っていた。

 小6のころ地元の奈良・橿原に巡業が来た。相撲少年は早速、大関琴欧洲の目に留まり佐渡ケ嶽親方に中卒での入門を勧誘された。だが高校ぐらいは出たいと進学した奈良・大和広陵高でレスリング部に勧誘され「相撲道」を外れた。

 回り道はした。もう迷いはない。腹もくくった。前夜、自ら琴奨菊に頼み化粧まわしを貸してもらった。「1年で三段目上位には上がりたい。先を見すぎず、焦らずコツコツと」。得意の投げや引き技はレスリングで培った。それは封印し前に-の相撲に徹する。【渡辺佳彦】