WBC世界バンタム級王者山中慎介(32=帝拳)が、引き出し全開で「バンタム級頂上決戦」を乗り越える。前WBA同級スーパー王者アンセルモ・モレノ(30=パナマ)との9度目の防衛戦は今日22日にゴング。21日には都内で前日計量に臨み、リミットいっぱいの53・5キロでパスした。最強挑戦者との一戦に、KO宣言は最後まで封印した。用意してきた多彩なバリエーションを駆使し、勝利のみを目指して突き進む。

 代名詞の「KO」は、最後まで、あえて封印した。山中は計量を終え、特製のすっぽんスープでエネルギーを補給すると「今回は勝ちにこだわりたい」と静かに言った。WBA王座12度防衛の実績を持つモレノの強さは誰よりも分かっている。「KO、KOと口にしてパフォーマンスに影響してもいや。12回ポイント勝ちでもいい」。引き締まった表情で言い切る姿が、この試合にかける決意を示していた。

 やるべきことはやってきた。モレノの鉄壁のディフェンスを攻略するため、得意の遠い距離での攻防だけでなく、強引に中に入り、打ち合うパターンも想定。「重要になる」と話す右のジャブも、角度、スピードに変化を加えるなど、過去最多150回のスパーリングを消化し、攻撃のバリエーションを増やしてきた。

 陣営の本田明彦会長は「基本線はジャブ。左を当てるために、どれだけ右が使えるかがポイントになる」と分析。その上で「準備してきたことが通用しなければ、ノーガードでも何でも行くしかない」と試合展開によっては強行突破のゴーサインも出す構えだ。

 チケットは発売数日で完売。モレノの母国パナマでも早朝から生中継が決定するなど、「バンタム級頂上対決」は大きな盛り上がりの中でゴングを迎える。キャリア最大の難敵を迎えた山中が、大一番で真の強さを証明する。【奥山将志】