WBA世界フライ級王者の坂田健史(28=協栄)が「先代の魂」を背負いながら、同級の日本人世界王者では最多タイ5度目の防衛を狙う。31日、地元広島で同級1位デンカオセーン・シンワンチャー(タイ)の挑戦を受ける。協栄ジムの故金平正紀前会長と同じ広島県出身だったこともあり、「先代の最後の弟子」と目をかけられた。昨年11月に引き分けた強豪との再戦で、入場時のガウンに先代のあだ名だった「CAPONE(カポネ)」の文字を入れた。

 大みそかへの思いが伝わってきた。前日計量で、坂田は珍しく闘志むき出しでデンカオセーンに鋭い視線を送った。カメラマンの要請で相手の正面に立ったとはいえ、今までなら相手の挑発には乗らず、ポーカーフェースを貫くことが多かった。しかし、この日は2度も10秒以上、相手とにらみ合った。

 「決着をつけなくてはいけない相手ですから」。昨年11月の初戦では、1回にダウンを食らい、辛くも引き分けた。ベルトこそ守ったが、決して納得はできなかった。周囲が亀田、内藤との日本人対決を騒ぐ中、デンカオセーンとの再戦を心に秘めてきた。

 勝負の再戦に、心強い味方もつく。入場時に着用する水色のスパンコールのガウンに「CAPONE(カポネ)」の赤い文字を入れた。世界王者8人を育てた故金平正紀前会長のニックネーム。同じ広島県出身の坂田は「最後の弟子」と呼ばれる。亡くなる2カ月前だった99年1月のデビュー2戦目にはセコンドにも入ってもらった。「先代の存在は大きかった。勝って墓参りに行きたい」と決意を明かした。

 5度目の防衛を飾れば、大場政夫と並び、日本人フライ級王者では最多タイとなる。先代と自分が生まれた広島でのライバルとの再戦。そして区切りの記録。昨年3月の王座奪取後では、最も大事な試合になる。「今までで最高の練習をして、最高のコンディションをつくれた。最高の試合をするだけ」。今年最後の大舞台への準備は整った。【田口潤】