<ハッスルマニア2008>◇30日◇有明コロシアム◇8831人

 アン・ジョー司令長官とシングルマッチで激突した歌手泰葉(47)は、必殺の回転「海老名」固めで大逆転勝利を挙げた。

 屈辱的な仕打ちだった。モンスター軍のアン・ジョー司令長官の猛攻にあい、リングに突っ伏した鼻っ面に、同軍セコンドの小路二等兵から1匹の子豚を突きつけられた。アン・ジョー司令長官に後ろ髪を引っ張られながら、泰葉は苦悶(くもん)の表情を浮かべて子豚と対面。「金髪豚野郎」の意味を体で味わった。

 だが、これで闘志に火がついた。まず、セコンドの清水マネジャーがイスを持って反撃。アン・ジョー司令長官がひるんだすきを泰葉は見逃さなかった。「無我夢中でしがみついた。必死だったのでよくわからなかった」という無意識の回転「海老名」固め。「勝てました。でも、私はいっぱい悪いことをした。反省しています」と涙を流しながら一連の騒動を謝罪した。

 「フライデー・チャイナタウン」をテーマ曲に、黒のコスチュームで登場。今年1年を物語るように、試合も逆境の連続だった。アン・ジョー司令長官の強烈な張り手、カナディアンバックブリーカーを浴び、リングに倒れ込んだ。竹刀を頭に振り下ろされ、首固めにもん絶した。頼みは場内の泰葉コールだった。「声援が励みになりました。相手は強いですから。それでも勝つことしか考えなかった」と振り返った。

 「勝ったら歌える」という高田総統のハードルをクリアし、清水マネジャーに抱えられながら、17日発売の再デビュー曲「お陽様よほほえんで」を涙ながらに熱唱した。歌いながら、ペットボトルのミネラルウオーターを頭にかぶるパフォーマンスも見せた。「(フランク)シナトラになったような気分が、ちょっと味わえた。来年は人さまに迷惑をかけない年にしたい」。「どんな逆境でも人はハッスルできる」という大会テーマにふさわしい結末でファンを沸かせた。【塩谷正人】