<プロボクシング:WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇12日◇神戸ワールド記念ホール

 WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(28=真正)は1回2分37秒TKO勝ちで、日本ジム所属選手として歴代3位の8度目の防衛に成功。国内の世界戦では26年ぶりの3連続KO防衛となった。長谷川は26勝(10KO)2敗。

 パンチの回転力が上がっていく。2度のダウンを奪った長谷川の仕上げは、炎の50連打だ。観客のボルテージは最高潮。最後の側頭部への左フックで、マリンガはよろめき左ひざを着いた。わずか157秒。圧巻の1回TKO防衛だ。「前の2試合が2回で終わったんで、今回は長いのを見せてくれてと言われていた。すいません」。試合直後、息は乱れていなかった。

 次元が違った。19センチのリーチ差をスピードで上回った。開始1分16秒にはカウンターの左ストレートで挑戦者を3メートルも吹っ飛ばした。「普通に打ったら倒れていた」。35秒後に連打で2度目のダウンを奪い、大勢は決した。

 「父親も母親もいろいろ不安を抱えてる。しっかりいい形で勝って安心させたかった」。母裕美子さん(53)は約2年前からがんを患い、治療中。今年1月にも肺の放射線治療で3週間入院した。ファイトマネーで費用を援助する長谷川は裕美子さんに「自分も頑張るから。何も心配しなくていい」と伝えていた。

 デビュー10年目。世界王座の在位期間は、まもなく丸4年を突破する。円熟期を迎えたが「新しい自分を発見したい」と向上心に衰えはない。生活態度を見直し、就寝を午後11時に早めた。朝のロードワーク時のダッシュを100メートル5本から12本に増やした。そんな姿勢が結実し「練習した成果が出た」と満足そうだ。

 これで4人目の世界ランク1位の挑戦者を退けた。WBCの指名試合の期限は1年で、通常なら3~4試合に1回の割合だが、長谷川は驚異的なペースで強豪を破ってきた。国内歴代3位の連続8度防衛にも「目標は防衛することじゃなく強くなること」。苦手のサウスポーを2戦連続で攻略し、今のバンタム級に敵はいない。【大池和幸】