<プロボクシング:WBC世界フライ級暫定王座戦12回戦>◇28日◇タイ・チェンマイ

 WBC世界フライ級22位升田貴久(30=三迫)の世界初挑戦は完敗だった。暫定王者ポンサクレック・ウォンジョンカム(32=タイ)の強打を浴びて2回にダウン。6回にもダウンを喫したところでレフェリーストップとなり、6回1分6秒TKO負け。減量苦に足が動かず、ベテラン王者の強打に屈したが、試合後には階級を上げて再起の意向を示した。日本人選手の海外挑戦は28連敗、タイでは13戦全敗となった。初防衛のポンサクレックは、次戦で正規王者内藤大助(34)-WBA同級1位亀田興毅(22)の勝者と対戦が義務付けられている。

 升田は開始から攻め込まれ、2回に連打を浴びて早くもダウンした。6回に左ボディーから詰められて再びダウンし、カウント途中でのレフェリーストップ。控室に戻っても「試合は覚えていない。何となく風景を覚えているが…」と言うのが精いっぱいだった。

 7月末に試合が決まり、約40日間で12キロ減量を強いられた。夏場の急激な減量がコンディションに影響。本来の足を全く使えず終始接近戦に。そこへフライ級最多17度防衛記録を持つ王者の強打を浴び、何もできずに夢を打ち砕かれた。

 05年に東洋太平洋ライトフライ級王座の初防衛に失敗した。3度目の引退を決意して能力開発会社に就職したが、思い直して今年再起。妻子を抱えながらも会社を辞め、JR上野駅構内のさぬきうどん店でバイトを始めた。

 しかし、なかなか世界戦が決まらず、6月には格下に判定負けした。再び引退がよぎったところで決まった世界戦。スパーリングもなしで臨むなど準備不足の上、特例承認で実現したランク22位からの挑戦と、実力差も明らかだった。

 それでも落ち着きを取り戻した升田は「階級を上げて」と再起を口にした。三迫会長も「調整期間が短い上に力が違い過ぎた。経験にすればいい」と後押ししたが…。(春原俊樹通信員)