WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(29=真正)が、「リアル・ファイト」でボクシング界を「復興」する。30日のダブル世界戦(東京・日本武道館)へ向け27日、都内で予備検診を行った。WBO(日本未公認)世界同級王者フェルナンド・モンティエル(31=メキシコ)との11度目の防衛戦。長谷川は事実上の統一戦に勝ち、亀田騒動で地盤沈下が続く業界を再び盛り上げる。

 「リアル・チャンプ」が「リアル・ボクシング」を見せる。この日約2時間の練習を終え、リミット体重(53・5キロ)まで1キロを切った。絶好の仕上がりだけに、長谷川は「いい試合になりそう」と最高のパフォーマンスを予言。山下正人会長が、そんな愛弟子の秘めた思いを代弁する。

 「この試合はかなり注目をされると思うので、ボクシング界に貢献できる。前はボクシングといえば亀田、亀田という人も多かったが、もう『ボクシング・イコール長谷川』くらいの認識を持ってもらえるようにならないと」。

 3月末の亀田3兄弟の父史郎氏(44)の「どう喝問題」以降、業界は逆風続き。ダーティーなイメージが定着してしまった印象だが、日本のエースが信頼回復の気持ちを拳に込める。事実上の2団体王座“統一戦”は、高レベルの激戦必至。ボクシングが本来持つ醍醐味(だいごみ)を十分に堪能できる、まさに「リアル・ファイト」だ。

 練習前の予備検診では、モンティエルと昨年9月以来の再会。挑発ムードはなく、友好的に握手し「グッドファイト」と声をかけた。「コンディションはよさそう。どうせ試合するなら、最高の状態でやりたいから」。測定の結果、モンティエルは2階級下のフライ級出身だけに、身長は5・2センチも上回った。それでも「体ががっしりしている。小柄という印象はない」と世界3階級王者を警戒。相手にとって不足なしだ。

 「アニキ」にも勝利を報告したい。ジム移籍(07年10月)の直前から親交を続ける阪神金本知憲外野手の連続フルイニング出場が止まり、長谷川も「びっくり。金本さんらしい決断」と驚いた。偉大な記録は止まったが、王者は鉄人を激励する意味でも、連勝街道を歩み続ける。【大池和幸】