<ボクシング:WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦>◇20日◇さいたまコミュニティアリーナ◇観衆5800人

 WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志(30=ワタナベ)がTKOで2度目の防衛に成功。同級5位ロイ・ムクリス(23=インドネシア)を開始から圧倒し、5回2分27秒、右フックに6連打を重ねてリングに沈めた。

 「KOダイナマイト」の豪打は「独特の拳」と「腹筋」に隠されていた。内山の拳は、拓大時代にパンチを打ち続けたことで、人さし指と中指の2カ所が盛り上がっている。パンチの力がその2カ所に集中することで、拳全体で打つよりも相手に伝わるパワーが増す。また、この試合前から全身の中で弱かった腹筋を強化。筋力バランスを整えたことで、パンチの回転力にも磨きがかかっていた。

 内山の両拳は、人さし指と中指部分が盛り上がっている。内山は「昔は普通の手だったんですけどね」と笑う。この拳になったのは、補欠にすら入れず、同級生の荷物持ちをした拓大時代。内山は「あれは今まででいちばん悔しかった。だからめちゃくちゃ練習しましたね。たぶんそれで内出血を繰り返して、でかくなったんだと思いますね」と説明した。

 シンプルな練習の繰り返しで、人さし指と中指の付け根が自然と盛り上がった。そこで打つと当たる面積が狭い分、力が分散されず重いパンチが打てると、うすうす気がついた。「なんかそこで打つのに慣れてきました」と振り返る。試合後すぐにアイシングをしないと腫れてしまうほどのパワーが、パンチに伝わるようになった。

 その土台のパワー値を上げる努力も続けてきた。K-1MAXの元世界王者魔裟斗氏を育てた土居トレーナーのフィジカルトレーニングを、昨年末から開始。土居氏は「全体に比べ腹筋が弱い」と感じたという。

 土居氏

 打たれ強い弱いでなく、他と比べてということ。鍛えて全体のバランスを整えると回転力が変わってくる。パンチにもしっかり体重が乗るんです。

 初防衛戦後、腹筋強化に本格着手。1日1000回の腹筋運動を続けた内山は「腹筋を使いながらパンチが打てるようになった」と試合前から手応えをつかんでいた。この試合でも、強烈な右フック一発の後、力の乗った高速6連打でムクリスにクリンチすらさせずにダウンさせた。独特な両拳と腹筋が「KOダイナマイト」の土台にある。