<プロボクシング:WBC世界フェザー級タイトルマッチ12回戦>◇8日◇神戸ワールド記念ホール

 WBC世界フェザー級王者の長谷川穂積(30=真正)が初防衛に失敗し、進退を保留した。同級1位で元WBOバンタム級王者のジョニー・ゴンサレス(29=メキシコ)と対戦。4回に右フックを浴びてダウン。立ち上がったもののレフェリーが止めて、同58秒にTKO負けを喫した。試合後は現役続行を明言せず、白紙とした。

 長谷川は悔しさを押し殺すように淡々としていた。先んじて粟生、西岡が鮮やかなKO防衛。メーンは衝撃の幕切れだった。

 長谷川

 悔しい気持ちはある。でも自分が弱かったから負けた。これがボクシング。次、やるからには相当の覚悟がいる。簡単に「やる」とは言えない。しばらくゆっくり考えたい。

 自ら進退に触れ、現時点では“白紙”と強調した。

 想定外の一発だった。警戒していたのはゴンサレスの左強打。1回に左フックを3発顔面に食らった。左への意識が強まる中、4回に右ロングフックをあごに浴びた。尻もちをついた。ロープをつかんで立ち上がったが、足がもつれた。即座にレフェリーに止められた。「(KOパンチは)見えてなかった」と認めた。

 昨年4月のバンタム級王座11度目の防衛戦でWBO王者モンティエル(メキシコ)に喫した時と同じ4回TKO負け。実は年明けから不調に陥っていた。打ち合った昨年11月の王座決定戦の後遺症だった。「打たせずに打つ」という自分のスタイルを見失った。スパーリングでも足を止めて被弾。この日も打ち合う場面が目立った。3回までポイントリードしても、ペースは相手にあった。

 中2だった16年前の阪神・淡路大震災を兵庫・西脇市内の実家で体験。今回の被災者の気持ちが痛いほど分かった。公式ブログに避難生活を送るファンから「楽しみにしてます」という言葉もあった。「そういうのを読むと本当に頑張ろうと思う」と決意していた。それだけに「東北の方たちに力を感じてもらえるような試合ができなかった」と悔しがった。

 「最後に(進退を)決断するのは自分。他人に言われても、命懸けてやるのは自分だから」。30代最初の試合。衰えを感じたかとの問いには「なかった」と即答した。完敗とはいえ、スピード、技術ともまだ世界レベルに変わりない。【大池和幸】