ジャイアント馬場、アントニオ猪木のライバルとして活躍した“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックさん(97年没=米国)の孫が、日本でプロレスラーになる。ノアは14日、エリックさんの次男で元プロレスラーのケビン氏(54)の長男ロス(23)と次男マーシャル(19)の入団を、東京・汐留の日本テレビで公開会見を開き発表した。2人は合宿所に入り、ツアーに帯同して4月初旬まで日本に滞在、プロレスデビューを目指す。

 大きな手で相手の顔をわしづかみにするアイアンクローでAWA世界王者に就き、プロモーターとしてNWA会長を務めたフリッツの遺伝子が、日本でよみがえる。ロスとマーシャルは、昨年10月にミズーリ州エルドンで行われた、元NWA世界ヘビー級王者ハーリー・レイス主宰のWLWとノアの合同レスリングキャンプに参加した。

 レイスの他、リッキースティムボート、父のケビン氏ら、往年の名レスラーが試験官を務めたトライアウトに合格。キャンプを訪れたノアの仲田龍GM(49)の眼鏡にもかない、ケビン氏の「世界中のいろいろなスタイルを全体的に習得するには、日本からの第1歩が最適」という勧めもあって入団を決めた。

 23年ぶりに来日したケビン氏と会見に臨んだ2人。ロスは「レイスのキャンプに参加したとき、レスラーになる意思を固めた」。マーシャルは「小さいときから、レスラーになる夢を持っていた」。目標について、ロスは「アイアンクローを伝えるために、父親、祖父の跡を継ぎたい」。マーシャルは「日本で基礎をしっかり習って、チャンピオンと呼ばれるようになりたい」と話した。

 2人のタイプについてケビン氏は「ロスは自分のような空中殺法、マーシャルはケリーのようなパワーが持ち味」とNWA王座に就いた亡き弟の名前を挙げた。ノアの丸藤正道副社長(32)は「ノアで活躍してもらえるのが一番だけど、血筋が血筋だから世界が見逃さない。米国でデビューする形になると思うけど、日本でも夏くらいには」と話した。エリックから3代にわたる鉄の爪ファミリーの爪痕が、また日本マットに刻まれる。【小谷野俊哉】

 ◆エリック・ファミリー

 祖父フリッツは1954年にプロレスデビュー。アイアンクローを駆使して活躍。63年にAWA世界ヘビー級王座に就き、66年からはテキサス州ダラスでプロモーターを兼任。NWA会長の座に就き、実業家としても成功した。66年に日本プロレスに初来日。その後は全日本を舞台に活躍した。82年に現役引退。6人の息子のうち5人がレスラーになったが、84年に三男デビッドが来日中に内臓疾患で急死。四男ケリーはNWA王座に就いたが、事故で足を切断して93年に自殺した。87年に五男マイク、91年に六男クリスも自殺している。長男ジャックは早世して、次男ケビンだけが健在。

 ◆ロス・フォン・エリック

 1988年6月1日、米国テキサス州生まれ。スポーツ歴はアマチュアレスリング、ブラジリアン柔術、アメフト、円盤投げ。183センチ、95キロ。

 ◆マーシャル・フォン・エリック

 1992年11月10日、米国テキサス州生まれ。スポーツ歴は円盤投げ、アメフト、サッカー。190センチ、105キロ。