プロボクシングの元5階級王者シュガー・レイ・レナード氏(55=米国)が「後継者」に、WBC世界スーパーバンタム級王者西岡利晃(35=帝拳)を指名した。13日までに日刊スポーツの電話インタビューに応じ、西岡のスピードと強打、35歳で7度防衛した実力を認めた。尊敬するレナード氏から高評価を受けた西岡は、年内対戦を希望するWBO同級王者で4階級覇者ノニト・ドネア(29=フィリピン)との団体統一戦への意欲を高めた。
「黄金の中量級」と称された80年代のボクシング界を盛り上げたレナード氏の記憶には「NISHIOKA」の名前が刻み込まれていた。
レナード氏
日本には8人の世界王者がいることは知っている。その中でも、西岡はスピードがあるし、すばらしいボクサーだ。
西岡はデビュー時代から「最も世界に近い男」と期待されたが、世界の道は遠く、左アキレスけん断裂、4度の世界挑戦に失敗。だが、32歳だった08年9月、5度目の挑戦で世界の頂点に立つと、そこからボクシング人生の勢いを取り戻した。09年5月の2度目の防衛戦は敵地メキシコで、元WBO王者ジョニー・ゴンザレスに3回TKO勝利。その後も順調に防衛を重ね、昨年10月の7度目の防衛戦は、本場の米ラスベガスで日本人王者初の防衛に成功した。
挫折からはい上がり、30代で躍進した姿に、レナード氏も共感する。
レナード氏
自分は(今の西岡と同じ)35歳で2度目の引退をしたが健康管理などが進歩した今は違う。年齢の感覚も変わったから、まだまだ十分に戦える。
「後継指名」を受けた西岡は喜びを隠せない。小学生時代から試合のビデオを購入するなど、あこがれの存在だった。特に81年9月のウエルター級王座統一戦。当時WBC王者のレナードがWBA王者トーマス・ハーンズに14回逆転TKO勝ちしたシーンは、今も脳裏に焼き付く。「コンビネーション、フットワーク、防御とすべてが最高の選手。覚えてもらってうれしい」と感激を新たにした。
年内にはWBO同級王者で4階級覇者ドネアとの団体統一戦が期待される。世紀のビッグマッチへ、レナード氏からの「後継指名」は、日々の厳しい練習の支えになるはずだ。【田口潤】
◆シュガー・レイ・レナード
本名レイ・チャールズ・レナード。1956年5月17日、米ノースカロライナ州ウィルミントン生まれ。76年モントリオール五輪ライトウエルター級で金メダル獲得後プロ転向。79年WBC世界ウエルター級王座を獲得。1階級上のスーパーウエルター級も制した後、84年に左目網膜剥離(はくり)で引退。87年に電撃復帰してハグラーを下し統一世界ミドル級王座を獲得。スーパーミドル、ライトヘビー級も制して5階級制覇。91年に2度目の引退。97年にカムバックもKO負けし、プロモーターに転身。現在はテレビキャスター、講演などをこなす。現役時代は179センチの右ボクサーファイター。