ボクシング元世界2階級制覇の長谷川穂積(34=真正)が、現役続行を表明した。14日、神戸市内の所属ジムで新年会に参加し、「今は引退のタイミングではない」と意思表示した。昨年4月に7回TKO負けで3階級制覇に失敗。直後は引退を示唆していたが、不完全燃焼の思いが募り、熟考の末に決断した。今春にフェザー級で世界ランカーとの再起戦を目指す。

 ゆっくりと言葉を選ぶように、長谷川が現役続行を表明した。「自分のボクシングが未完成という気持ちがある。今は引退のタイミングではない。今、引退すれば、死ぬ時に後悔すると思った」と説明した。

 昨年4月に壮絶な7回TKO負け。「心技体がかみ合ってだめなら、完全燃焼できるが、どこかで欠けた部分があった。負けた直後からすっきりした日は1日もなかった」。引退と現役続行のはざまで揺れた。太らないため同7月にジムワークを再開。同時に競技から離れた時間を使っていろんな選手の映像を見た。「なぜもう少し早く見なかったのか。(技を)試してみたい気持ちがわいた」。

 昨年末、自分と近い階級のボクサーの映像を見た。「どんなボクシングをしよう、どうやって戦おうと考えている自分がいた。ワクワクドキドキした」。今月11日、山下会長と話し合い、現役続行を決定。「僕を心配してくれる人は皆、反対した。体は問題ないと思うが、試合をやってみないと分からない部分はある。ただ殴られて(体が)ダメになるまでやるつもりはない」。

 再起戦は今春にフェザー級の世界ランカーと行う見通し。「世界戦のチャンスがあればいいが、そんなに簡単じゃない。最低、世界ランカーとやって自分の力量を確認したい。どれが最後の試合になるか、分からないけど、もう少しだけボクシングを」。敗戦から8カ月以上も熟考を重ねて、長谷川がラストチャレンジを決断した。【益田一弘】

 ◆長谷川穂積(はせがわ・ほづみ)1980年(昭55)12月16日、兵庫・西脇市生まれ。元プロボクサーの父大二郎さんの影響で、小2からボクシングを始める。99年11月にプロデビュー、03年5月に東洋太平洋バンタム級王座獲得。05年4月に世界初挑戦でウィラポンを破ってWBC同級王者となり、10度防衛。10年11月に2階級上げてWBCフェザー級王座を獲得し2階級制覇。昨年4月に3年ぶりの世界戦で3階級制覇に挑戦したが、失敗。戦績は33勝(15KO)5敗。身長168センチの左ボクサー。<長谷川の進退経過>

 ▼壮絶KO

 3階級制覇をかけて、昨年4月23日にIBF世界スーパーバンタム級王者マルティネスに挑戦も7回TKO負け。右眼窩(がんか)底と鼻骨骨折で、そのまま入院した。

 ▼退院

 試合から一夜明けた同24日、切れた左まぶたを縫うだけで退院。神戸市内のジムを訪れ「また、あらためて会見しますのでよろしくお願いいたします」と引退を示唆する。

 ▼ジムワーク再開

 同7月からジムで体を動かす。10月には日本ランカーとスパーリングも敢行。自らの進退について「まだ何も決まっていない。1年くらいゆっくりしたい」。

 ▼初マラソン

 同10月26日に大阪マラソンに出場。「僕に気づいた人のほぼ全員が応援してくれた」。

 ▼ランク外

 同11月27日に5位だった日本スーパーバンタム級ランキングから外れる。直近の試合から6カ月以内に試合をせず今後も予定がない場合は原則、外れる規定があるため。