WBA世界フライ級王者デンカオセーン・シンワンチャー(32=タイ)が14日、現段階で同級2位亀田興毅(22=亀田)の挑戦を受ける意思がないことをあらためて訴えた。前日13日に亀田側が王者の共同マネジャー、ナリット・シンワンチャー氏と6月に挑戦する契約を交わしたと一部の報道機関に発表。これに対してデンカオセーンは、もう1人のマネジャーのニワット氏と都内で会見し、ナリット氏との関係を解消したことを強調した上で、ニワット氏を窓口に挑戦者を「一から探す」ことを表明した。

 契約書のコピーを目にしても、王者陣営は首を縦に振らなかった。ニワット・マネジャーは「契約書は今日、初めて見た。選手本人のサインさえない」と書類の不備を主張。亀田陣営が13日、一部の報道機関に契約が合意したと発表し、公開した契約書に疑問符を付けた。「初防衛戦はタイで行う。相手は一から探す。日本人とは限らない」。時折立ち上がりながら約1時間半、持論を展開した。

 混乱の原因は、デンカオセーンにニワット、ナリット両氏という2人のマネジャーが存在することだった。昨年12月に前王者坂田健史(協栄)から王座を奪うと、年明けにナリット氏が単独で亀田側との交渉を開始。1月16日に契約が交わされた直後に、両マネジャーの関係が悪化。3日後にデンカオセーンがニワット氏と単独のマネジメント契約を結んだ。もともとナリット氏の待遇に不満を持っていた。「今後交渉はニワットを通してだけ行う」と王者は話した。

 ニワット氏は12日にデンカオセーンと来日。WBA同級8位升田貴久(三迫)と4月に防衛戦を行うことで合意したが、14日に予定していた会見の前夜に破談となった。同氏は15日の帰国後、ナリット氏と話し合いを持つが、デンカオセーンは「ナリットの元には戻らない。苦労させられた」と決別を口にした。

 王者側の2人のマネジャーによるダブルブッキングで、混乱に巻き込まれる格好となった亀田ジムは「あちら側の問題なので、静観するしかない」と困惑していた。亀田にようやく訪れた2階級制覇のチャンスは、思わぬ場外戦のあおりを受けることになった。【森本隆】