関脇妙義龍(28=境川)が横綱鶴竜(30)を破った。結びの一番で先手を取り、行司差し違えで6勝目。大関昇進も期待され続ける体脂肪22%のアスリート力士が、執念で白星をつかんだ。

 角界一の筋肉マンが、存在感を示した。鶴竜を押し込み、はたかれた妙義龍は、土俵で協議する審判を見つめた。「無我夢中でよく分からんかった。でも体はよく動いている。執念やね」。相手のかかとが先に出て行司差し違えとなると、気持ち良さそうに引き揚げた。「やっぱり格別にうれしいね」。鶴竜戦は7勝7敗の五分とし、6度目の横綱撃破をかみしめた。

 横綱を慌てさせた鋭い出足は、驚異のボディーのたまものだ。埼玉栄高時代の岡武聡トレーナーとプロ入り後に個人契約し、週2回トレーニングに励む。年末に行った体組成の測定では体重153・5キロ、筋肉量は118・7キロ。体脂肪率は22・7%だ。さらに岡武氏は「瞬発力が素晴らしい。今まで15年間で見た同世代でNO・1」と言う。高3時、平均約200センチの立ち幅跳びで271センチを記録。スポーツの盛んな同校で今も破られていない。夏巡業中も施設を借りて体を追い込んだストイック男は「これだけのパフォーマンスを発揮できるために稽古してるんで」と胸を張った。

 優勝争いからは遠のいているが、番狂わせを演じて懸賞35本(手取り105万円)のボーナスも獲得。場所前にプロテインを愛飲するグリコ社から化粧まわしを贈られたこともあり、使い道は「全部ビスコ買うよ」と笑った。大関昇進も期待される実力者の理想のボディーは「160キロで体脂肪25%」。まだまだ進化を止めるつもりはない。【桑原亮】