大相撲の「春日山部屋」が一時消滅した。日本相撲協会から師匠辞任を勧告された春日山親方(39=元前頭浜錦)が19日、東京・両国国技館を訪れ、八角理事長(元横綱北勝海)に受諾の意を伝えた。今後は「部屋付き親方」となる。部屋は19日付で同じ伊勢ケ浜一門の追手風部屋の「預かり」となったが、力士23人のうち12人の引退届が協会に受理されたことが分かった。前代未聞の大量引退。春日山親方は「(弟子は)一生懸命やっていた。本当に申し訳ない」と謝った。

 受け入れる追手風親方(元前頭大翔山)は春日山部屋がある川崎市内で力士8人、床山1人と面談し、追手風部屋付きの中川親方(元前頭旭里)が師匠代行として指導することを伝えた。ただ、勧告撤回を求めて嘆願した幕下の水口、萬華城ら力士11人は欠席していた。今後は受け入れスペースの問題などで、同市内に残る先代親方(元前頭春日富士)時代に使用していた建物に移り、中川親方が同居する。新たな継承者が決まれば11月の九州場所後にも春日山部屋は再興されるが、中川親方は「まずは力士たちの心のケアをしたい」と話した。

 問題のきっかけは、春日山親方が協会に残るために必要な「年寄名跡証書」を所有していないことだった。証書の引き渡しを巡って先代親方と係争し、1審判決で対価として約1億7000万円の支払いを命じられた。部屋を継ぐために引退した12年2月から4年半、証書が手元になく、春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)はその状態を「無免許運転」とたとえ、控訴中での急な決定には「1審判決を重く見た」と説明した。