白鵬が、壁として立ちはだかり続けてきた稀勢の里の初優勝を許した。初顔合わせの貴ノ岩に敗れて3敗目。横綱昇進後、初めて4場所連続で優勝を逃すことになった。主役が帰った後の東の支度部屋で「強い大関がいて良かった」と言った。続けて「おめでとうですね」と、祝福の言葉を贈り、悔しさを隠すように笑みを浮かべた。

 足をすくわれる、予感めいたものがあったのかもしれない。朝稽古後、8日目に荒鷲に敗れて初対戦との連勝が28で止まったことを意識したのか「初顔で今場所負けてますからね」とつぶやく。「(8、9日目に)連敗してちょっと(調子が)下がり気味だった」と、調子が上向かないことも気にしていた。その言葉どおり、立ち合いが甘かった。狙ったもろ差しをおっつけで封じられると右を差され、小手投げで残そうとしたが、寄り切られた。「ちょっと目で見ていく感じになった」とうめいた。

 朝稽古後、稀勢の里の横綱昇進について「いい方向に行けば第72代横綱というのも見えてくる」と、その成長を認めるような口ぶりだった。だが、38度目の優勝を逃し、会場を後にする際には「それは協会が決めること」と素っ気なかった。「明日もいい相撲を取るだけです」。2横綱が休場した今場所。千秋楽で稀勢の里を倒し、横綱の意地を見せる。【佐々木隆史】