手負いで臨んだ横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)の土俵態度には、協会関係者の胸を打つものがあったようだ。

 左が使えず、横綱対決で鶴竜(31=井筒)にあっさりと土俵を割った一番を、会場の役員室で見守った八角理事長(53=元横綱北勝海)は、しばしの間を置いて「思うように使えないね。(ケガをしたのが得意の)左だからね」と発した後に「出来ることを精いっぱいやってる」と新横綱の必死さを評価した。この状態で出場した以上は、千秋楽も「出るでしょう。精いっぱい取るでしょう。今の精いっぱいを出せばいいんじゃないか。必死にね」と見通した。

 この日、出場に踏み切ったことにも「土俵に立ちたいという気持ちがいい。力を出し切れず本人は残念だろうが明日一日ある。それに期待したい。(今場所)最後の一番、と思えばまた力も違うだろう」と触れた。