<第4回AKB48選抜総選挙>◇6日◇東京・日本武道館

 社会現象になって3年目に入った。今年も収束どころか、投票総数は史上最多記録を大幅に更新。エース前田敦子(20)卒業の余波も、全く感じさせなかった。国民的アイドルグループの今後は?

 総選挙結果から見えてくるファン心理とAKB48の現実とは?

 AKB48のデビュー当時から、誰よりも長く取材し続けるアイドル評論家の岡田隆志氏(52)が解説する。

 

 投票総数が増えると、結果は知名度に比例するので上位の変動は少ない。ぶっちぎり大島1位の票差を見たところで、AKB48グループの未来を読み解くことはできない。それよりも、今年は選抜枠が64人にまで増えたことで、メンバーやファンのやる気を加速させ、姉妹グループからは総勢21人が選ばれた。そこにこそ、AKB48グループの現実と将来が見えてくる。

 彼女たちのファンには、ネット掲示板やコミュニティーで「選挙対策本部」を立ち上げるほど熱心な人たちが多かった。そこまでの情熱に火を付けたのは、何よりも姉妹グループのメンバーたちの、日々の一生懸命さだ。躍進は、相乗効果のたまものだった。

 各グループのライブにかける意欲やファンの熱を、比較できる機会があった。5月の東京ドームシティホールで、21日間かけて各チームが日替わりで公演を披露する「見逃した君たちへ2」が行われた。個人的なベスト3は、HKT48、NMB48チームN、SKE48チームS。AKB48は、旧チームKが、ようやく4位に入るかという出来だった。AKB48メンバーは、個人の仕事も多く、劇場公演が少なくなるので、完成度を上げるまでには、たどり着けない。一方、地方の姉妹グループは、東京のAKB48に比べて、チャンスも少ないから、必死さで上回る。「会いに行けるアイドル」では、この差が、選挙結果に表れたといえる。

 ただ、そんな中でも、大島は、飛び抜けていた。いつ見ても、全力で高い集中力のパフォーマンスは変わらない。周囲までも、上手に引き込み、チームワークを作り上げる能力まであった。柏木由紀、渡辺麻友らも公演での質が常に高い。出演回数こそ少ないが、選挙上位のメンバーは、どんなに多忙でも、アイドルの本分を失っていない面々ばかりだった。総選挙の結果が、おおむね、AKB48の当初からの基本コンセプトに沿っていたことは、今後への安心材料だ。

 今回の総選挙で、初選抜入りしたメンバー、研究生たちは、すぐに大きく成長していくだろう。このプラスの連鎖反応こそが、グループの成長と活性化のエンジンだ。非情な人気ランキングの側面もあるが、ニューヒロインが生まれるチャンスの場所でもある。【岡田隆志】

 ◆岡田隆志(おかだ・たかし)1960年(昭35)6月1日生まれ。94年にミニコミのアイドル誌「スクランブルエッグ」創刊。16歳時の浜崎あゆみ、アマチュア時代の椎名林檎らを特集するなど先見性にたけたアイドル評論家として知られる。06年に同名の会社を設立。172センチ。血液型O。