【ベネチア8月31日=木下淳】宮崎駿監督(67)の“後継者”がまた1人誕生した。最新作「崖の上のポニョ」がコンペ部門に選ばれ参加中の宮崎監督が長男の吾朗氏(41)に第1子の男児が誕生したことを明かした。監督にとって初孫。将来について「『ペンを握れ』と言っておきました」と同じ道を歩むことを期待した。会見前のプレス試写会では同作を国外に初公開。ほぼ満員の上映終了後に主題歌を口ずさむ記者が出る盛況だった。

 宮崎監督に初孫となる吾朗氏の長男が誕生したのは8月11日。生まれたばかりの赤ちゃんに向かって「ペンを握れ」と言ったことを、公式会見後、日本の取材陣にうれしそうに明かした。吾朗氏も06年に映画「ゲド戦記」を手掛け、同年のベネチア国際映画祭に特別招待された。初孫も同じ道を歩めば3代に渡る映画監督。吾朗氏に対しても「ざまあみろ。子育ては大変で夜も眠れないぞ」と言いつつ「子供がいなければ子供向けの映画は身近にならない」と今後の好影響を期待した。

 くしくも最新作「崖の上のポニョ」は、子供の誕生を祝福する気持ちで作った映画だった。宮崎監督はこの日の公式会見で「(スタジオジブリの)スタッフに子供ができて、子育ての話を聞きながら『この子たちが初めて見る映画にしよう』と思った」と製作理由を説明。設定について「男女の皮肉とかも考えたけど、目の前の子供を見ると誕生を祝うことが一番」と考えて形にした。公開1カ月後に自分にも幸福がめぐってきた。

 国外初公開となる映画の感触も良かった。日本では興収約121億円(8月28日現在)を記録した作品。前夜のプレス試写とこの日朝の試写を合わせた計1750席がほぼ満員。主題歌が耳に残る現象も世界共通だ。上映後、各国の記者が肩を組んで「ポーニョ、ポニョ、ポニョ」と口ずさむ場面も見られた。鈴木敏夫プロデューサー(60)が「海外の人も1回聴くと覚えちゃうらしいんだよ」と話す通りの現象がベネチアでも再現された。

 宮崎監督は次回作について「次があるとすれば70歳を超えるので周りの人が決めること。若い世代の養成も考えなければならない」と明言しなかったが「子供に接することで気付かなかったものが出てくる」と話した。おじいちゃんになったことで、新たな創作意欲が生まれる可能性もある。