<日刊スポーツ映画大賞授賞式>◇28日◇ホテルニューオータニ

 無表情のロボット、盲目の女剣士、愛嬌(あいきょう)たっぷりのキャビンアテンダントと、三者三様の役柄を演じ分けた綾瀬はるか(23)は、純白のドレスで登壇した。23歳9カ月の主演女優賞は94年の高岡早紀に次ぐ若さだった。

 コメディーからシリアスな時代劇まで、スクリーンの中ではどんな世界観でも堂々と振る舞った綾瀬でも、経験の少ない授賞式の壇上だけは緊張した。「すいません、苦手なんです。本当に(受賞者が)私で申し訳ないようで…」。だんだん後ろに下がってしまい、司会者に指摘されるとますます恐縮した。

 胸の開いた純白のドレスも心配の種だった。控室で「もしかして、派手ですか?」と心配したが、レッドカーペットを優雅に歩くと瞬く間に「きれ~い」の声が会場に広がった。この存在感が受賞の決め手になったのは、まだ本人は気付いていないかもしれない。23歳9カ月の主演女優賞は94年高岡の22歳1カ月に次ぐ若さだった。

 今年の映画だけでも、幾つもの“目”を披露した。「ICHI」では、盲目の剣士になって虚空を見つめ、「僕の彼女はサイボーグ」では、機械として無機質な視線をつくった。ドジで元気な新人CA役の「ハッピーフライト」は、憎めないキュートなウインクを客席に届けた。「違った役だったので、切り替えやすくて演じられたんです」と、さらりと語るのも大器の片りんだった。

 「主演女優」の看板が似合うようになっても、綾瀬の視線はそんなに遠くを見ていない。「演技って答えもゴールも見えないじゃないですか。だから目の前のことに愛情を注いで、全力で大切に取り組むこと。後はしっかりした舞台あいさつですね」。舞台あいさつを気にするのは、目の前にいるファンを思ってのこと。長く愛されるスターになりそうだ。【瀬津真也】