父で歌舞伎俳優中村芝翫(51)と2カ月連続の襲名披露興行に挑んでいる成駒屋の3兄弟、国生あらため中村橋之助(20)、宗生あらため中村福之助(18)、宜生あらため中村歌之助(15)が登場です。

 歌舞伎座での2カ月連続の襲名興行も後半戦がスタートした。「吉例顔見世大歌舞伎」(25日まで)に出演している。

 まずは10月の公演の感想を聞くと、橋之助は「たつ時間が早い」、福之助も「生きてるなあって感じます」。充実感でいっぱいのようだ。

 末っ子の歌之助は大忙しだった。11時から始まる舞台に上がる前、中学3年の彼は、まず1時間目の授業に出ていた。教室にいられるのは10分ほどのため、両親、教師からも「学校を休んでもいいよ」と言われたそう。記者も思わず「出なくても良かったのでは?」と驚いて聞くと、歌之助は「義務教育なので、やっぱり行かないと。11月はもう少し(授業に)出られるかな」。生真面目さに、兄たちも驚いていた。

 11月は父芝翫とともに、親子4人で「祝勢揃寿連獅子(せいぞろいことぶきれんじし)」を踊っているほか、「加賀鳶」「口上」「芝翫奴」に出演している。「芝翫奴」は、25日を3つに分け、それぞれが1人で舞台に立つ。

 橋之助は「見終わったお客さまに、『芝翫奴』の感想を言いながら帰っていただきたい」と意欲的だ。終盤8日間を担当するのは福之助。つまり、千秋楽の最後の幕に立っていることになる。「経験できないことなので、かみしめて踊りたい」。歌之助は「うれしいんですけど、緊張すると思います」と素直な気持ちを吐露した。それでも父がいつも掛けてくれる言葉「楽しんでやった方がいい」を胸に舞台に立つつもりだ。

 3人は本当に仲がいい。昨年の襲名会見の時から、橋之助は「3本の矢のように、兄弟力を合わせて…」と何度も繰り返してきた。取材中、橋之助は弟たちに「僕ばっかり話してるから、はい、話して」と振る。さらに、福之助がファンサービスをする様子や、緊張を顔に出さない歌之助の話題を、記者に伝えてくれた。兄のリードで、弟たちの口も滑らかになった。

 橋之助には、観客との距離を近くしたいという思いがあるという。歌舞伎を見たことがない同世代の友人も、襲名興行を見に来てくれた。自分たちの襲名が、いいきっかけになればと願っている。【小林千穂】