焼き肉を食べながら泣いたり、笑ったり、怒ったり…。高度成長期の70年代の関西を舞台に、小さな焼き肉店を営む在日韓国人6人家族の人間模様を描く。家族らが本音でぶつかり合う姿は、感情がむき出し。飛び交う言葉は、日本語と韓国語と関西弁。それぞれの生き方は決して器用ではない。だけど、全力で生きる姿は胸に迫る。

 原作の同名舞台は08年に初演。演劇界の賞を総なめにした。原作を手掛けた劇作家鄭義信(チョン・ウィシン)が自らメガホンを取り、映画化した。戦争で故郷と左腕をなくした父の金龍吉を韓国の実力派、キム・サンホ、肝っ玉母さんをイ・ジョンウン。美人姉妹の長女を真木よう子、次女を井上真央、三女を桜庭ななみが演じた。龍吉と家族は明るく懸命に働き、常連客でにぎやかな毎日だが、次第に時代の波が押し寄せる。

 前半はややドタバタ感があるが、龍吉が何もかものみ込み、グッと耐える姿には共感を覚える。井上が巻き舌で「あほんだら!」と周囲を一喝するシーンは圧巻だ。「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる」。龍吉のセリフに体が熱くなった。【松浦隆司】

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