歌、芝居、ダンスとも現役随一の星組トップ、北翔海莉が傑作オペレッタをもとにした「ミュージカル『こうもり』」で、痛快な音楽劇に臨む。ショー・スペクタキュラー「THE ENTERTAINER!」では、特技を生かした場面もある。劇団有数のエンターテイナー。その肝は「おかげさま」精神と説き、初舞台生を迎える公演で存分に腕を“魅(み)”せる。兵庫・宝塚大劇場で18日~4月25日、東京宝塚劇場で5月13日~6月19日。

 いなせな江戸っ子からギャンブラー、ディズニーの名曲を歌えば絶品。当代を代表する実力派トップだ。

 「けいこ場は爆笑が絶えない。毎日、違うセリフを(アドリブで)言うので、(演出の)先生は『いいかげんにしろ』と(笑い)」

 19世紀後半のウィーンが舞台。「ワルツ王」とたたえられるヨハン・シュトラウス2世の傑作オペレッタは、ファルケ博士と親友のアイゼンシュタイン侯爵がいたずらを仕掛け合う。掛け合い喜劇でもある。

 「私、幕開けから酔っぱらっていて。(こうもりにされる)オープニングは、もはや衣装というより装置! みんなで紅白に出られるんじゃない? って言っています」と笑う。小林幸子も真っ青? だ。

 原作とは異なり、仕返しをされる侯爵を2番手に、仕掛ける博士が主人公の設定。侯爵役の2番手スター紅ゆずるも劇団有数の芝居巧者。加えて芸達者な星条海斗も専科から加わり、実力派がそろった。

 「適材適所で役がはまった。紅さんがいて、星条さんが専科から来て、ちょっと強烈! 本番でも遊べそう。誰かがミスをしてもリカバリーできますね」

 手応えはある。北翔は12年、専科に移り、昨年5月、前トップ柚希礼音の後を継ぎ星組トップに就いた。専科時代の13年に主演した「THE MERRY WIDOW」で原作オペレッタの曲をそのまま披露。当時から「いつか『こうもり』を」と温めてきた。

 「オペレッタを勉強したときに印象に残った。発声そのものが(歌劇の楽曲と)クラシックはまったく違う。使い分けが楽しい」

 星組下級生は、けいこ場の時点から、3オクターブの声を操るトップに度肝を抜かれている。入団19年。劣等生だった宝塚音楽学校時代に原点はある。入団後も劇団レッスン以外にクラシック、タップに社交サルサダンスも習い、サックスなど楽器も学んだ。

 「本当にコツコツとやってきてよかった。人前に出る舞台人は自分を磨き続けなければならない。(学年が)上がるほど怠けがちになる。(技術は上がっても)体力が落ちもするし」

 今公演は102期生の初舞台作。卵たちには“金言”も授けてきた。

 「『おかげさま』を忘れないでと伝えました。皆さまの“お”かげ、感謝(“か”んしゃ)の気持ちで、いつも元気(“げ”んき)に“サ”ービス精神を持って。“ま”だまだの気持ちで謙虚に、という意味を話してきました」

 おかげさま精神でトップまで上り詰めた。ショーでは少年が歌を習い、ダンス、お笑いも習い、一人前のエンターテイナーとして成長する姿を描く。

 「自分との闘いの19年でもありました。ショーはスパニッシュ、コーラスラインの世界観もあります。初舞台生にも(北翔の生きざまを重ね)少しでも何か感じてもらえたら」

 北翔の「特技」「趣味」を生かした「本番まで内緒」のコーナーもある。トップ2年目を目前に「組子の笑顔も増えたみたい」。“北翔イズム”の浸透を感じている。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「こうもり」…こうもり博士の愉快な復讐劇…(脚本・演出=谷正純氏) 「ワルツ王」こと、ヨハン・シュトラウス2世の傑作オペレッタ「こうもり」をもとにしたミュージカル。舞台は19世紀後半のウィーン。ファルケ博士(北翔)は、親友のアイゼンシュタイン侯爵(紅ゆずる)とともに仮装舞踏会に出席。泥酔したファルケはアイゼンシュタインのいたずらで、大通りに縛り付けられ「こうもり」の装いのまま、朝を迎えた。ファルケが親友に仕返しを考え、実行していく様をコミカルに描く。

 ◆ショー・スペクタキュラー「THE ENTERTAINER!」(作・演出=野口幸作氏) ジャズ、クラシック、ポップスと多様な名曲を現代風にアレンジしたエンターテインメント・ショー。

 ☆北翔海莉(ほくしょう・かいり)3月19日、千葉県生まれ。98年「シトラスの風」で初舞台。99年月組、06年宙組へ。歌、芝居、ダンスと3拍子がそろい、12年7月に専科。14年1月の星組公演「眠らない男・ナポレオン」で轟悠、水夏希に続き3人目のスター格での5組制覇。昨年5月、17年2カ月で星組トップに就任。同8月「ガイズ&ドールズ」で本拠地お披露目。趣味はサックス、フラメンコなど。身長169・7センチ。愛称「みっちゃん」。