NHK連続テレビ小説「あさが来た」の全話平均視聴率が23・5%だったことが4日、ビデオリサーチ調べで明らかになった(関東地区)。02年前期「さくら」(23・3%)を上回り、今世紀最高となった。昨年9月の試写会で、個人的に基準にしている“当たる朝ドラの特徴”を大いに感じ、放送前から読者におすすめしてきただけに、びっくりぽんな記録にわくわくした。

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 あくまでも個人的な印象だが、当たる朝ドラは放送前の試写会に独特の雰囲気がある。77席あるNHK最大の試写室で行われるが、仕事モードでむすっとメモをとっている記者たちが、いつの間にかげらげら笑ったり、もらい泣きしたり。試写室をお茶の間のように変える力が、主人公と物語にあるのだ。終了後、ライバル社同士が感想で盛り上がり、担当プロデューサーはあらゆる角度から質問攻めにあう。「あまちゃん」や「マッサン」の時にも感じた雰囲気が「あさが来た」にもあった。

 会場には主演波瑠の所属事務所社長もいた。自信作であることと、ヒットすることは別の話であることを知り尽くしている敏腕だけに、やはり心配そうだった。「いつもと比べてどう」と聞かれたので「面白いし、試写室全体のリアクションがずばぬけ。当たる気配がすごいです」と、勝手な印象を伝えてしまったほどだ。フタを開ければ「今世紀1位」の大ヒットとなったのだからびっくりぽんだ。試写で披露されたのは第1週(6話分)の子役の鈴木梨央ちゃん時代だったが、夫、新次郎役の玉木宏が実年齢25歳差の梨央ちゃんとミラクルないいなずけコンビを成立させていて、話題満載のまま波瑠にバドンタッチできたことも大きかったと思う。

 朝ドラは、試写の雰囲気が視聴率の手掛かりになりやすい印象だ。映画やドラマの場合、たとえ試写室がいたたまれないほど盛り下がっていても、動員力のある人気俳優の力や、巧みな話題作りなどで、興行的に成功することは多々ある。

 しかし、朝ドラの場合は主演がブレーク前の若手女優であることが多く、先入観なく作品に向き合う感じは、試写室も茶の間も同じ。試写後、帰りの通路で口々に感想で盛り上がってしまう様子と、放送を見た視聴者が誰かと感想を共有しようとSNSなどで盛り上がる様子はイコールに見える。「マッサン」の鴨居の大将(堤真一)とか、「あさが来た」の五代さま(ディーン・フジオカ)とか、脇のキーマンまで話題になるといよいよ大当たりという印象で、そんな現象をメディアが伝えてさらに盛り上がっていく。

 で、新しく始まった「とと姉ちゃん」(主演高畑充希)だが、ここ数年では唯一、所用で試写を見ることができず、私的セオリーの空白になっている。出席した先輩記者に聞いたところ「普通」。参考になるような、ならないような。「あさが来た」くらい、夢中になれる半年間になるとうれしいのだけれど。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)