岡山理科大(岡山市)が育てたクロマグロ1匹が15日、岡山市の卸売市場で競りに出された。海水魚の飼育が可能な特殊な淡水「好適環境水」を使って内陸で育てられた。相場を上回る3万1900円(14・5キロ)で岡山県倉敷市の業者が競り落とし、関係者は「養殖業界にとって新たな一歩だ」と期待を寄せた。

 クロマグロの養殖では、近畿大が世界で初めて卵からの「完全養殖」に成功。専門料理店を東京・銀座や大阪に出している。

 好適環境水は岡山理科大の山本俊政准教授(水産増殖)が、魚の成育に必要なカリウムなどを淡水に加えて開発した。内陸でも海水魚を飼育でき、病気にかかりにくく、成長も早いという。これまでにもフグやウナギを出荷してきた。

 この日競りに掛けられたクロマグロは、2012年9月から大学の巨大水槽で育てられた。1年8カ月かけて体長約90センチ、重さ約15キロまで成長させ「理大マグロ」と呼ばれる。岡山市市場事業部によると、通常、養殖クロマグロは良いものでも1キロ約2000円だが、2200円の値がついた。

 競りを見守った山本准教授は「苦労も多かったが、陸育ちのマグロが食卓に並ぶのは感無量だ」と笑顔を見せた。岡山理科大は早ければ8月にも養殖を再開する予定で、魚体の大型化やコスト削減を目指す。