放送タレントの永六輔さん(82)が9日に亡くなった作家の野坂昭如氏(享年85)を悼んだ。パーソナリティーを務めるTBSラジオ「六輔七転八倒九十分」の14日の生放送で、野坂さん死去後、初めてコメントした。

 番組冒頭で「赤いシャツを着てます。これでお通夜に行ってきました。お通夜はどんな格好でもいい。取るものもとりあえず出席するのが通夜。今日は、お通夜の延長で……。駄目だ、こりゃ……」と涙で絶句した。早稲田の学生時代から70年近い付き合いだという。

 「野坂さんとはケンカしたことはない。お互いに尊敬していた。野坂さんは江戸文芸の勉強家として大変な人。天才です」などと話した。

 「野坂昭如さんからの手紙」として脳梗塞で倒れてから12年間も番組に毎週メッセージを寄せていた野坂さんは、前週7日に手紙を送っていたのが最後になったと思われていたが、もう1通の手紙を書いていたことが分かった。

 暢子夫人から届けられた最後の手紙が、番組の中で読み上げられた。

 「僕はあまり夢を見ない。最近、走っている夢を見る。どこを走っているのか、何から逃げているのかも分からない。景気回復、内需拡大の世の中で、僕は全く逆で質素倹約。かつてベストドレッサー賞をもらったが、今は寝間着が多い。虚構の繁栄は長続きしない」などとつづっていた。

 暢子夫人からの手紙は「永先生、お願いがあります。図々しいお願いですが、葬儀委員長をお願いします。野坂が喜ぶでしょう。野坂がちょっと笑ったようです」と書かれていた。永さんも「19日、葬儀委員長をやります」と答えた。

 永さんと野坂さんは、3年前に亡くなった小沢昭一さん(享年83)と3人で「中年ご三家」として日本武道館でコンサートまでした仲間だった。