耳の不調でライブ活動無期限休止を発表した氷室京介(55)のファイナルライブ「LAST GIGS」が23日、東京ドームで開催された。チケットを入手できなかったファンのために、ステージが見えない場所も座席として開放。BOφWY時代の楽曲からソロ曲まで幅広く披露し、ライブ活動にいったん終止符を打った。

 本編後、会場でウエーブが起きる中、再び現れた氷室はしみじみと言った。「何回も区切りでやらせてもらったけど、今日のドームは最高だぜ。こうしてたくさんの連中がエネルギーを送ってくれた人生35年間、本当に感謝しています」。

 ファンのリクエストも踏まえ楽曲を厳選した。「最後の夜だぜ」と絶叫し、BOφWYの楽曲「DREAMIN’」からスタート。BOφWY楽曲とソロ曲とほぼ半分ずつで構成。「今日のライブはオレの35年の歴史になる」。言葉通り、歌手生活の軌跡を丁寧にたどった。

 ファイナルライブは約30万人以上動員の4大ドームツアーとして敢行した。21日から東京ドームで3日間公演を開催し、連日、超満員の5万5000人を動員。東京公演には40万件の予約が殺到した。

 東京公演は多くのファンと同じ時間を過ごしたいとの思いから、「見切れ席」を急きょ販売。バックステージにかかりステージを見られないが、3日間計6000席分はすぐに完売した。

 この日は何度もファンに語り掛けた。GLAYのTAKURO、B’zの松本孝弘の3人で焼き肉を食べた話を披露。笑い声が起きると「何笑っているんだよ。オレだって焼き肉ぐらい食うよ」。ファンとのやりとりも楽しんだ。

 14年7月のソロ25周年ツアー中、耳の不調を理由にライブ活動無期限休止を発表した。音楽制作は続ける予定。「『還暦』ってアルバムを出そうかな。1曲目は『シックスティ(60)』、2曲目は『年金』」と冗談を言いながらも「時間をかけてアルバムを作ろうかな。これ、マジな話」と今後のビジョンを語ると、会場から大歓声が上がった。

 3時間20分で35曲を披露。2回目のアンコール後、マイクをそっと床に置いて去ったが、鳴りやまないファンの氷室コールに再びステージに上がった。ラストソングはBOφWYの大ヒット曲「B・BLUE」。「I LOVE YOU!」。涙はない。甘い声と笑顔を残し、ステージを後にした。【近藤由美子】

<氷室アラカルト>

 ◆プロフィル 1960年(昭35)10月7日、群馬県生まれ。81年ロックバンドBOφWYを結成。人気絶頂の88年に解散。同年「ANGEL」でソロデビュー。124万枚を売り上げた「KISS ME」などシングル30枚、アルバム12枚を発売(ベスト盤を除く)。97年からロスが拠点。

 ◆東京ドーム公演 BOφWYで2回、ソロで12回開催。女性、男性含めソロ歌手では史上最多記録。

 ◆東日本大震災復興支援チャリティー公演 11年6月に2公演で計11万人を動員。ソロ活動にこだわってきたが「一番元気づけられるのはBOφWYの楽曲」と、初めて全曲BOφWYの楽曲で構成。チケットはネットオークションで10万円以上に高騰した。

 ◆骨折も公演続行 14年7月の全国ツアー最終公演で、その前日公演前のリハーサルで胸部骨折したことを初めて明かした。