上方落語四天王の各一門代表4人が22日、大阪・国立文楽劇場で師匠をしのぶ追善落語会を開き、開演前にDVD「落語研究会 上方落語四天王」(1万6416円)発売取材会を開いた。

 壇上には、桂文枝一門の6代桂文枝(73)、6代目笑福亭松鶴一門の笑福亭鶴光(68)、3代目桂春団治門下の桂福団治(76)と、桂米朝一門で長男の桂米団治(57)の4人が並んだ。

 戦後、没落寸前だった上方落語界に四天王が入門したのは、ほぼ47年ごろ。4人が中心となって埋もれていたネタを掘り起こし、上方落語を復興させた。

 61年に春団治さんに師事した福団治は「当時は18人ほどでしたが、いまや260人を超えるはなし家がおります。ひとえに四天王と呼ばれる方々のおかげ」と感謝した。

 東京に拠点を移して28年になる鶴光は、四天王の中でもリーダー格だった松鶴さんへ思いをはせ「春団治師匠はきっちりしてたから、破門や言うたら、破門でしたけど、うちの師匠は破門言うても、また戻れる。僕なんか8回ほど破門になってる」。激情家ながらも人情味にあふれ、性格は破天荒だった松鶴さんの一面を明かした。

 鶴光によると、松鶴さんのガールフレンドの肩に手をかけただけで破門になった落語家もいるといい「友達やらにおごりまくって、ほんまに貧乏やった。(DVD収録の)貧乏花見なんか、身(実生活)から出たような、もう絶品です」。逸話に事欠かない師匠の思い出には、話が止まらない様子だった。

 DVDには四天王の名作が収録されており、米団治はその中から「どうらんの幸助」についてのエピソードを披露。タイトルを漢字で「胴乱」と書くと、米朝さんはひどく怒ったといい「漢字やと書き直してた。こだわりの米朝でしたから」と学者肌な一面もあった父をしのんだ。

 文枝は、師匠の「蛸芝居」が絶品だといい「これだけは我々には誰もできない」。5代目文枝さんといえば上方特有の「はめもの」と呼ばれる音曲を取り入れた高座が持ち味で、女性を演じるのが得意だった。柔らかな芸風は「はんなり」と称されたが、その背景には若き日に歌舞伎界で勉強したキャリアがあった。

 それだけに、弟子の文枝は「動きとか、話の運び方はもう誰にもまねができない」と感じていたといい、いまだ高いハードルを越えられないようだ。

 その四天王も、今年1月に春団治さんが亡くなり、全員が鬼籍に入った。現在、上方落語協会会長も務める文枝は「ついに我々の世代に(上方落語が)託された。DVDを見てもっと勉強しなさいということやと思う」と表情を引き締めていた。