舞台女優としても活動する声優の生田善子（30）が、愛する高校演劇を漫画にした。原作を担当し、漫画誌「電撃マオウ」で連載中の「暗転エピローグ」（漫画＝パイン、キャラクターデザイン＝Tiv）第1巻が11月27日に発売された。

公式番組として、文化放送のインターネットラジオ「超！　A＆G＋」で12月1日に放送された「暗転モノローグ～もし声優生田善子が高校演劇マンガの原作者をやったら～」（土曜午後2時半）では、スタジオを直撃し、生田にインタビューを敢行。その番外編として収録後、生田を取材したインタビューの2回目は、生田が「暗転エピローグ」の先にある声優、女優、原作者としての夢を語る。【取材、構成＝村上幸将】

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－高校演劇をテーマにした「暗転エピローグ」を、逆に舞台化する考えは

生田　あります！　舞台は現実的な話として、あるなぁと思っていて。舞台ものなので、すぐやりたい。実は構想もあります。舞台は熱量がダイレクトに伝わると思うので、キャストはお芝居が好きな人に出ていただきたいですね。

－舞台は、初心者には敷居が高いが、漫画からだと入りやすくなりそう

生田　舞台を見ない方に、最初に舞台です、と言っても、ハードルが高くて絶対に見ないと思います。（公演中に）しゃべっちゃダメなど、マナーやルールも結構ある中で、漫画が1番、入りやすいのかな？　というのがありました。小劇場ですと、少ししゃべっただけでも気になります。公演途中の入退場も（舞台が）見えなくなりますし、光も漏れますし、マナーは大分、必要になります。みんなから、そういう部分がハードルが高いと言われていることだったので、皆さんの身近なもの、ハードルが低いものから入りたい…そこから、演劇漫画が誕生することになりました。

－舞台化した場合は、台本も書く？

生田　私が書いてもいいんですけど、お願いする演出家さんとの相性もあると思うので、演出家さんが使っている脚本家さんがいたら、原作を元に書いていただいて監修する形の方が、もしかしたらクオリティーはいいのかなと。

－脚本、演出家にはならない？

生田　芝居バカなんですね。好きなんですよ。書くのも、すごい好きですけど、どうしても、まだ、やる方が…。SNSやYoutubeが普及した影響で、世の中に発信したい人、発信する側が増えていて、見る側がいないという問題が起きていることが気になっています。演劇は観客あってのものなので、それでは絶対に成立しないじゃないですか。そこを、どうするのか…役者、舞台の魅力を考えていきたいです。

－パソコンやスマートフォンで作品を見るオンデマンド世代からは、長時間の舞台や映画を見る集中力が続かないという声も

生田　私は3年前から、そこをすごく考えていました。私のように演劇が好きな人間でも、2時間の演劇を見るのに体力を使うのに、慣れていない人は見ていられないと思う。自分が主宰した舞台は、1時間続かないくらいの舞台を休憩を入れて2本、などという形で上演しました。短く完結し、つながりがあるものを考えて…プロデューサーっぽいですよね（笑い）

－今後、演劇をどうしていきたい？

生田　歌舞伎が「ONE　PIECE」とコラボしたように、演劇も一般の人が見に来やすい状況を作っていかなければいけないと思います。映画館じゃないですけど、食べられるようにするとか、見方の方法を考えるとか…。演劇に興味がない人が、足を運びたくなる工夫を考える必要が、演劇を続けて行くには絶対、必要だと思いますね。

－声優としては

生田　いろいろな役をやりたいです。舞台ではやったことがあるんですけど、声優では、いわゆる悪役をやったことがないんです。憎めない、嫌みっぽいかわいいキャラはありますけど、本当に悪い役はやったことがなくて…そこが、目標値ですね。基本的にはお客さまに好かれないけれど、好かれなければ好かれないほど、自分が勝ちだと思える役って、ないじゃないですか？　ファンは、自分が何をやっても「良かった」って言ってくれるわけですよ。でも、悪役って多分、う～んって言われる…それが勝ち。リアルな反応がもらえるので、好きですね。悪役は面白い。

－悪役以外で、やりたいのは？

生田　子どもの役とか。私は舞台で、背が低いって言われることが、すごく多かったんですよ。短大の演劇科に入学して早々に、先生たちに「君は、どんなに芝居が出来たとしても、すてきな女優でも、身長が足りません。子役でしか使われないよ。周りと身長を比較をした時に、どうしても子役に見える。児童劇団でしか使えない」と。時代劇だと、特に小さく見えるので子どもの役でしか使えないとも言われました。でも、声優は全く、制限がないんですよ。この年でおばあちゃんも子どもも、悪役も出来て（演じる）本人の縛りが全くないのが、声の仕事の魅力だと思うので自分と遠い役がやりたいです。

－それが、東京・俳優座劇場で5日に初日を迎える舞台「志士たち～明治維新に主役なし…あるのは魂のリレーのみ～」では時代劇の舞台に初挑戦。年齢を重ねて、味が出てきたからつかんだチャンスでは？

生田　出るんですよ！　すごく今、楽しいです。良い経験をさせていただいて。

－最後に、ファンにメッセージを

生田　私はデビューしたての頃、ずっと「君は何になりたいんだ？　何になるか、絶対に1つに絞った方がいい。舞台女優なのか声優なのか…1本、極められないと何にもなれない」と言われてきました。私は「絞れません」って答えていました。私は、エンターテイナーになりたいんだと。表現というもので、やれることは何でもやりたい…と言い続けてきて、こうして今、コミックスの原作を書かせてもらって、舞台をやって、声優のお仕事をやらせていただいて、歌わせていただくことも出来る。（何をやるか）決めなくて、良かったなと、すごく思っています。私は、この本を読んでくださる方たちに夢、自分の気持ち、やりたいことを諦めないでやって欲しいなというのが、すごくある。漫画を通して伝わったらいいなと思っています。今、悩んでいる人に読んで欲しい本です。

漫画で高校演劇を伝える構想を、3年かけて形にした生田…踏み締めた第1歩は、燃え上がるように熱い。